黒より暗い白
□8匹目
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「――今学期始めの私立誠凛高校との練習試合で破損した、とのことですね」
用紙に理由を記入し、復唱していく。
「ああ」
よくわからないが笠松に慣れてもらったようだ。
「わかりました。お手数お掛けしてすみませんでした。それでは」
ペコリと頭を下げ、出て行こうとする。
「ちょ! 瑚白っち、もう帰るんスか?」
残念そうな黄瀬にこくりと頷いた。
「はい。ここでの仕事は終わりましたので」
「そうっスか……」
あきらかに肩を落とす黄瀬をそのままにしてドアへ向かう。
「それでは失礼します」
「って、行っちゃうんスか!?」
顔をあげた黄瀬が慌てて引き留める。
「? はい。ここでの仕事は終わりましたので」
「そう――って、それ、さっきも聞いたっス!」
「さっきも言いました」
何でもないような声音で言う。
「うぅ……」
黄瀬は俯いてしまったが今日は他にも仕事があるので放っておくことにした。
笠松、それから目の合った森山に一礼してから体育館を出る。
「あ! 瑚白っち、今日、バイ――」
「……出てったぞ」
「ひどいっス! 瑚白っち!」
後にした体育館から黄瀬の声が聞こえた気がしたがきっと気のせいだろうと思うことにした。
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