黒より暗い白

□3匹目
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「……どーも」

「!!」

いきなり声をかけられ、驚いて持っていた資料を落とした。

持っていた資料はバラバラと床に散らばる。

振り返ると呆れ顔をした黄瀬が立っていた。

「ああ。何してるんスか」

黄瀬がしゃがみ、資料を拾い始める。

「ごめんなさい」

隣にしゃがんで資料を拾う。

「別にいいっスよ。……?」

隣で資料を拾っていた黄瀬の手が止まった。

「実習やるんスか?」

黄瀬が見せてきた紙は朝のホームルームで担任が話していた実習の申し込み用紙だった。

「はい。チョココロネは好きです」

思わずそう答えると黄瀬は苦笑いをする。

「いや、パン作りっスけどチョココロネとは限らないっスよね?」

「? 希望すれば好きなパンが作れるんですよ。知らないんですか?」

今朝の話ではそう言うことだった。

「そう……なんスか?」

「はい」

「へぇ……」

じっと申し込み用紙を見ていた黄瀬から用紙を受け取り、ぺこりと頭を下げる。

「私、職員室に寄らないといけないのでこれで失礼します」

「……あ。待って」

引き止められて振り返る。

「?」

「オレも一緒に行くっス」

「……え」

その提案に思わず動きが止まった。

「プリント、一人じゃ大変そうだし」

そう言ってプリントをなかば強引に奪い取り、そのまま職員室へ向かう。

「はあ……ありがとうございます」

何となくお礼を言って後を追いかけることしか出来なかった。


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