灰色days

□第13話【好きと照れ】
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「わ、私は――」

口を開き、自分の気持ちを言葉にしようとする。

「――黒崎先輩が……」

【好き】

その言葉がなかなか言えない。

そんな自分に苛立つ。

「うぅ……」

「……泣くなよ?」

「泣いてませんよっ」

「それは即答できんだな」

蘭丸が笑い、ぎゅうっと抱き締めた。

「……おれは……おまえのことが好きだ」

「……え……」

驚き、固まる。

「黒崎先輩……今……」

《何て……?》

蘭丸の顔を見上げようとするが、蘭丸に頭を胸に押し付けられてしまい、それは出来なかった。

「うるせぇ! 何度も言わねぇからな!」

恥ずかしそうな蘭丸の声に思わず嬉しくなる。

「……私も……」

小さな声で呟く。

「……あ?」

蘭丸が腕の力を緩め、こちらを見る。

「私も大好きです! 先輩!」

ガバッと笑顔で蘭丸に抱きついた。

「っ!? お、おい! 危な――」

抱きついた反動で蘭丸が床に尻餅をつく。

「あ……ご、ごめんなさ――」

慌てて離れようとすると蘭丸に腕を引っ張られ、元の体勢に戻る。

「あの……」

「……気づかなくて悪かったな……」

「え?」

蘭丸が腕を離し、向かい合うように座る。

「……おまえは気がついてたってのに、情けねぇ……」

ため息をつき、頭をかく。

「黒崎先輩?」

「【おれは……――蘭丸だ】」

「!」

懐かしい言葉に驚きつつ、蘭丸の顔を見つめた。

「【蘭丸――花の蘭に丸いって書いて蘭丸】」

目を細め、微笑む蘭丸にくしゃっと頭を撫でられる。

「…………蘭くん……」

「……何だよ?」

「好きです!」

ぎゅっと蘭丸に抱きつくと今度はちゃんと抱き留めてくれた。

「わかってる」

「ふふっ」

頭を撫でられ、今まで以上の幸せを感じる。

「黒崎先輩、少しよろし――」

突然、ドアが開き、入ってこようとした真斗が固まった。

「おい、聖川先に行くなって――って、ランちゃん達、何して――」

「何もしてねーよ!」

「きゃっ!?」

いきなり立ち上がった蘭丸に何故か突き飛ばされた。

ボスっと蘭丸のベッドの上に倒れる。

「黒崎先輩! 私、退院したばかりですよ!? もう少し丁寧に扱ってください!」

ベッドの上で体勢を整え、文句を言う。

「うるせぇ! 黙ってろ!」

「どれだけ照れ屋なんですか!」

唖然とする真斗と何故か楽しそうなレンの前で喧嘩を始める。

「大体、黒崎先輩は乱暴すぎです。昔はもっと優しかったのに!」

「昔は関係ねえだろ! つーか、お前こそもっと大人しかっただろ!」

「ほらほら、二人とも。仲良しなのは【よーくわかった】から喧嘩はやめなよ」

見かねたのかレンが止めに入る。

「レン、聖川、何かあったのか?」

「何やら大きな声がしましたが……」

後輩達が慌てた様子で入ってきた。

「うっせぇ! 出てけ!」

「ただいま〜。皆何してんの〜?」

「装飾は終わったわけ?」

嶺二、藍、カミュが荷物片手に帰ってくる。

「ん? ことりん、不機嫌そうな顔してどうかした?」

「別に何でもありませんっ」

頬を膨らませる。

「す、すみませんでした……」

「ごめんね、ことりちゃん」

慌てて頭を下げる真斗と困ったように笑うレンに対し、ベッドから降りて笑顔で答える。

「……ふふっ。大丈夫だから気にしないで?」

「ことりんっ!」

嶺二が背中に飛び付いてきた。

「! 何? れいちゃん先輩」

「仲良くなれた?」

「……うん!」

笑顔で頷く。

「良かったね、ことりん――って、うわぁ!?」

「コトリは退院したばかりなんだよ。少しは考えなよ、レイジ」

「バカか貴様は」

嶺二が藍とカミュに剥がされる。

「はいはい。ごめんって。さてと! パーっとパーティやろうか!」

「うん! もう、準備万端だよっ!」

音也が元気よく頷いた。

嶺二について皆が出ていく。

「……ことり」

「行きましょう、先輩!」

蘭丸に笑顔で言うと蘭丸も笑ってくれた。








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