灰色days

□第8話【仲間と幸福】
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ライブが終わり、楽屋へ行く。

「お疲れ様ですっ! すごくかっこよかったですよ! 黒崎先輩!」

楽屋に入るなり、蘭丸へ感想を言った。

一瞬目を丸くした蘭丸だったがすぐに得意気に笑う。

「はっ。当然だ」

「っていうか……ことりん、早っ!? 客席からここまで来るの早すぎない!?」

唖然とする嶺二達の視線を受け、首を傾げた。

「え? そうですか? そんなことないよね、ななみ――ハッ!? 居ない!?」

後ろを振り返って呆然としていると少し遅れて息を切らした春歌が駆け込んできた。

「ハルハル!?」
「ななみん!?」

「す、すみません……ことり先輩……速くて……」

「……コトリのスピードについていける訳ないよね」

「ああ。足だけは速いからな」

藍とカミュがため息混じりに言った。

「足だけって……。言っておきますが、料理もそれなりに得意です!」

「知らないよ、そんなこと」
「そんなことは知らん」

「ひどい!」

「ことり先輩はれいちゃんだけじゃなくて先輩達とも仲良いの?」

音也が不思議そうに聞いた。

「うん、仲良――」

「――しな訳ないでしょ?」
「――い訳がないだろう?」

「ひーどーいっ!」

声を合わせて否定をする二人に抗議の声をあげる。

「ふふっ。仲良しさんなんですね〜」

那月が楽しそうに言った。

「でも、あのお姉さんが作曲家なんてビックリだよなー」

水を飲んでいた翔の言葉に照れたように笑う。

「あのっ、ことり先輩。曲の提供をされて
ないって本当ですか?」

春歌が少し聞きにくそうに尋ねてきた。

「曲の提供をしていない……?」

「なんで!?」

後輩達が一斉にこちらを見る。

先輩達はそれぞれ何か複雑そうな顔をしていた。

「……うーん。私、認めてもらいたい人がいて、その人に歌ってもらえるまで他の人への提供はしてないの。……あ。BGMとかは作ってるけどね」

「歌ってもらいたい人……ですか」

トキヤが眉をひそめて呟くように言った。

「うん。だから他に時間割いてる場合じゃないの」

「……それでサオトメに怒られたくせに」

藍がぼそりと呟く。

「全く……毎度毎度呼び出されるこちらの身にもなれ」

カミュがため息をつく。

「ええっ。藍ちゃんもミューくんも迷惑だったのっ!?」

「当たり前でしょ?」
「当たり前だ」

「ひどいっ!」

頬を膨らませ二人を見る。

「何々? 三人で遊んでるの? れいちゃんお呼ばれしてないんだけど!? ランランは? お呼ばれ来たっ!?」

嶺二が蘭丸に聞いた。

「うるせぇな。ねーよ」

蘭丸は面倒そうにそれだけ言う。

「呼ぶわけないでしょ? ランマルが来たらコトリが動揺するし」

「酔いが早く回り、余計に面倒だ」

「そ、そうなの?」

ため息をつく、藍とカミュに不安気に尋ねると藍が眉をひそめた。

「無自覚が一番厄介だよね」

「今度は五人で行こっ!」

肩を組んできた嶺二が笑顔で言った。

「えっ!? く、黒崎先輩も?」

「……まぁ、奢りなら行ってやるよ」

「そうか、寿の奢りか」

「ボクは行かないよ。面倒だし」

先輩達の様子を見て後輩達も微笑んだ。

「今度はここにいる皆で遊んでみたいね」

笑顔でそう提案すると皆頷いたり、笑顔を見せてくれた。

《前途多難だけど……【幸せ】なのかな……》

全員の様子を見て、そんな風に思ってしまった。












大好きな先輩

大切な友人

可愛い後輩

幸せだと確かにそう感じた








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