灰色days

□第3話【寝起きと料理】
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「しかし、まさかランちゃんが女の子を連れてくるとはね」

「ふざけんな。仕方なかったからっつってんだろ」

「しかし……病院等に連れていかなくて大丈夫なのですか? いきなり倒れたのでしょう……」

「あ? ただの貧血か立ち眩みだろ。こいつにはよくあんだよ」

「ふぅん。詳しいんだ? ランちゃん」

「何だよ。つーか、あんま近づくな」

「えー? だってこんなにも可愛い寝顔をしたレディなんだよ? 近づくなって言う方が無理だよ」

「おい、神宮寺。病人の前だぞ。少しは大人しくしとけ」






「ん……?」

人の声が聞こえて目を覚ます。

《黒崎先輩の……匂い?》

いつの間にかベッドの上に寝ていた。

「おや? 眠り姫のお目覚めかな?」

「大丈夫か? 気分が悪かったりどこか痛んだりはせんか?」

声のした方を見るとそこには二人の青年が立っていた。

「大丈夫……です?」

上体を起こしてそう答えると二人は顔にはホッとしたような表情をしていた。

「……神宮寺レンくんと、聖川真斗くんだよね?」

そう尋ねると二人は一瞬、驚いたように顔を見合わせた。

「知ってもらえてて、とても嬉しいよ。ありがとう、レディ」

「ああ。知ってもらえている、というのは嬉しいものだな」

嬉しそうに笑う二人の間を割くようにして蘭丸が現れた。

「いい加減にしろ、てめぇ等」

不機嫌そうに二人を睨む。

「く……黒崎先輩!?」

「あ? てめぇも目が覚めたんならとっとと行けよ」

「あ! ありがとうございました、黒崎先輩。迷惑かけてしまって本当申し訳ありませんでした」

ベッドの上でペコリと頭を下げる。

立ち上がろうとしたが、バランスを崩してしまった。

「!!」

「っと!」

咄嗟に蘭丸に支えられる。

その様子を真斗とレンが意外そうに見ていた。

「本調子じゃねぇくせに無理してんじゃねーよ、バカが」

「す、すみません」

ほぼ強制的にベッドに戻される。

「大体、てめぇ、また朝食抜いたんだろ」

「ぬ、抜いてませんよ! ただ……少し夜更かしを……」

ボソボソっと言うと蘭丸に睨まれた。

「寝てねぇんだな?」

「うぐ……ごめんなさい……」

その答えると蘭丸はため息をもらした。

「いいか? おれはおまえがどうなろうか関係ねぇ。でもな、おれの目の前で倒れんな。迷惑だ。それから二度とおれの前に現れんな」

そう言って立ち去ろうとする蘭丸の背中に向かって言う。

「私の曲を歌ってもらうまで私、諦めませんからっ!」

振り返った彼は不機嫌そうにこちらを見た。

「だから、てめぇの曲は歌わねぇ。ずっとそう言ってんだろうが」

「でも私は――」

再びフラッとしてベッドに倒れ込む。

《また……。……大声出したからかな……》

「! おい大丈夫か!?」

真斗とレンが駆け寄り、介抱しようとしたがそれを蘭丸が止める。

「てめぇ等は仕事があんだろ。早く行け」

「でもランちゃん――」

「行け。相手方に迷惑かけんな」

「……わかりました。行くぞ、神宮寺」

真斗が促し、レンと共に部屋から出ていった。

「……マジでてめぇは無理ばっかしやがって……」

不意に蘭丸の手が額に触れた気がしてうっすらと目を開けた。

「……黒崎……先輩……」

「寝てろ。バカ」

「手……ひんやりしてて……気持ち良いです……」

フワッと笑いかけるとその途端に手が離れていった。

「……チッ。とりあえず、安静にしてろよ」

少し照れ臭そうに言うと蘭丸も部屋から出て行こうとする。

「……ありがとう……ございます……」

薄れる意識の中で何とか礼を言う。

「……バカが……」

優しげな声音でそれだけ言う声が聞こえた気がした。





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