雪桜

□遭
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【旅】という名の【逃亡】をしていた


誰から、というわけじゃない


【過去】から逃げていた


だから【彼ら】もただの通過点のはずだった







ここは新撰組の屯所だ。

そこのある一室で新選組の局長である、近藤勇と副長の土方歳三が近況報告をしている。

「失礼します。お茶を持って参りました、近藤さん、土方さん」

髪を一つにまとめ、男性の着物を着た女の子が入って来た。

「おお。雪村君か」

「すまねぇな、千鶴」

彼等に雪村君、千鶴と呼ばれた女の子は近藤、土方の前へ一つずつお茶を置く。

「雪村君も大分慣れてきたな」

近藤が嬉しそうにうんうんと頷く。

「こんなとこに慣れたって良いことなんかねえけどな」

土方は、ふぅと息をはきながらお茶を飲んだ。

「ところで、平助達は戻って来てんのか?」

「あ。いえ……まだ戻って来てないです」

千鶴の言葉を聞いた土方は表情を曇らせる。

「少し遅いな……」

「確かに……」

千鶴が土方に釣られて心配そうな顔をすると近藤が大きな声で笑い始めた。

「ははは。何を心配してるんだ、トシも雪村君も。平助達が遅いのはいつものことだろう。そのうちに帰って来るさ」

そう言って近藤がお茶を飲もうとした時だ。

「近藤さん、土方さん、居る!?」

平助こと、藤堂平助の声が屯所内に響く。

「ほら、みなさい」

近藤は千鶴達に笑いかけると、襖を開けて顔を出した。

「平助、どうした。何かあったか?」

「あ!」

平助は近藤の姿を見つけると勢いよく走ってきた。

「近藤さん、実は……!」

平助は慌てた様子で近藤の前で息を荒くしながら事情の説明をしようとしている。

「とりあえず中に入れ、平助。話はそれからだ」

土方は眉をひそめて平助に言った。

「あ……わかった」

平助は土方の言葉に従い、中に入ると土方、近藤、千鶴の前に座る。

「えっと……簡単に言うと、屯所の入口に人が倒れてたんだ」

「さっきの慌て様から見るに……その人物が何か問題を抱えているってぇことだな?」

土方がそう言うと平助は少し気まずそうに頷いた。

「……して、その問題とは、何だ?」

近藤が眉をひそめながら尋ねる。

「……血だらけなんだ。そいつ……」

「ち、血だらけ!?」

千鶴が思わず、声をあげた。

「そ、それがそいつの血じゃないみたいで……」

「誰か人を殺したか、傷つけた……そういうことだな?」

土方は渋い顔で尋ねる。

「多分、ね」

「その者は今?」

「新八っつぁんが屯所の前で見てると思う……息はしてるんだけど意識は無いみたいでさ。オレたち、どうしたらいいのかわかんなかったから、近藤さん達を探してたんだ」

平助は近藤の顔を見て言った。

「うむ……。とりあえず、今の段階では何とも言えん。その者を屯所に――」

近藤がそこまで言った時。

「こっちに誰か来なかったか!?」

新八が息を切らせながら入ってきた。

「どうした新八」

「いや、実はさっきの奴を中に運んで誰か呼びに行こうと思ったら――」

「……いなくなったのか?」

眉をひそめながら言葉を繋げる土方に新八が頷く。

「……ちょっと目ぇ離した隙に」

「何してんだ……お前等は」

土方が深くため息をついた。

「「すんません」」

二人が謝る中で土方は刀を手にし、立ち上がる。

「とりあえず探すぞ。近藤さんは千鶴と一緒にいてくれ」

「ああ……わかった」






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