黒より暗い白

□8匹目
1ページ/3ページ



「お疲れ様です」

中の様子を確認してから声をかける。

「!!? 瑚白っち!?」

すぐさま黄瀬が近づいてきた。

「はい。えっと、部長さんはいらっしゃいますか?」

「笠松先輩は……」

「笠松なら今いないけど……何? 俺が聞いておくよ」

スッと出てきたのは切れ長の目をした背の高い男子生徒。

「森山先輩……」

黄瀬が少し嫌そうな顔をした。

「いえ。いらっしゃらないのでしたらまた後で伺います」

他の仕事もあるのでその帰りに寄ってもいい気がする。

「……何の用事だったんスか?」

少しホッとしたような顔で黄瀬が尋ねてきた。

「壊れたゴールについての説明を聞いてくるよう言われまして」

「ぅ……」

そういった瞬間、黄瀬の表情が曇る。

「何で君が?」

森山先輩が不思議そうに尋ねた。

「すみません、申し遅れました。生徒会書記、1年の黒根瑚白です」

慌ててペコリと頭を下げる。

「瑚白ちゃんか! 良い名前だね」

「はあ」

名前を誉められたことはなかったので首を傾げた。

「俺は3年の森山由孝。よろしくね」

パッと右手を出されたので咄嗟に握り返そうとしたがそれはバッと間に割り込んできた黄瀬に止められた。

「も、森山先輩!」

「ん? 何だ、黄瀬」

なおも右手をしまわない森山は流石だ。

「瑚白っちにちょっかいだすのはダメっス!」

「いいじゃないか。出会いは平等にあるものだろ?」

「瑚白っちはダメっス!」

どうでもいい攻防を見せられ、控えめに発言する。

「……あの、どうでもいいので帰っていいですか?」

「ダメっス!」

「出会いは平等だ!」

「……」

二人には届いていない。

黄瀬の背中によって私の言葉は跳ね返されたようだ。

「……何してんだ、お前等は」

後ろからした呆れ声に黄瀬と共に振り返る。

「! 笠松先輩!」

「……あ。部長さんですか?」

黄瀬の背中から抜けて笠松先輩と呼ばれた、部長と思わしき人物の前へ立った。

「!?」

驚いた、というより怯えたような顔をされ、なんだか申し訳なくなる。

「……何かすみません」

「い、いや……別に……」

顔を反らされた。

「部長さんに用事がありまして」

「……? 用事?」

笠松が不思議そうな顔をしたので生徒会の者であると改めて名乗った。

「それで、壊れたゴールについてなんですが」

「……あー……」

早速用件を言うと笠松が少し面倒くさそうに頭をかく。

「言いにくいようでしたら面倒なので適当に書いときます」

「……は……?」

笠松が唖然とした表情をする。

「適当に……そうですね」

笠松から視線を反らし、黄瀬を見た。

「? な、何スか、瑚白っち」

少し顔を赤くした黄瀬から視線を笠松に戻す。

「黄瀬くんのせいにでもしておきます」

「何でっスか!?」

「黄瀬の友達か」

笠松の言葉に黄瀬が嬉しそうな顔をした。

「! そうっ――」

「違います」

バッサリと断ち切った。

「瑚白っち!?」

何故、と言わんばかりの黄瀬を一瞥してから再び言う。

「違います」

「2回言ったっス!」

「大切なことなので」




.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ