黒より暗い白

□7匹目
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誰もいない駅のロータリーのベンチに二人座っている。

「……ここはどこですか?」

隣で俯いている黄瀬に尋ねた。

「……終点の駅っス……」

なお肩を落とす黄瀬に駅舎を振り返りながら再び尋ねる。

「……終電は?」

「……もうないっス……」

黄瀬はふるふると頭を横に振って答えた。

「……今の状況は?」

「……駅から追い出されたんで駅前のベンチに座ってるっス……」

今度は両手で顔を押さえながら答える。

「……」

少し黙って考え始めることにした。

《帰るにしても……》

父は昨日から1週間の出張中で母は今夜は夜勤で泊まり込み。

つまり、今自宅には誰もいない。

《……タクシーにしてもそんなに手持ちはないし……》

黙り込んでしまった様子を見て黄瀬が慌てて言い訳をする。

「ご、ごめんっス! 瑚白っちが降りる場所で起こさなきゃとは思ったんスけど……ってかオレも気がついたら寝てて……」

しゅんっとして落ち込んでしまった。

「全くもってわたしの不注意です」

気にしないでほしいという意味だったのだが黄瀬は申し訳なさそうな困り顔をする。

「瑚白っち……」

気持ちを伝えるというのは本当に難しい。

「タクシーで帰ろうかと思いましたが……」

黄瀬から目を反らしため息を堪えながら言葉を続ける。

「お金が足りないので諦めました」

「オレも手持ちはそんなに……」

そう、申し訳なさそうな声が聞こえてきた。

「……どうするっスか?」

「黄瀬くんは自宅近いんですか?」

顔を見ながらそう尋ねた。

「え。途中までならタクシーで帰れば何とか」

帰れるのであれば早く帰った方がいいに決まっている。

「じゃあ帰ってください」

「何か傷つくっス!」

また、伝わらなかったようだ。

「だ、大体、瑚白っちはどうするんスか」

「……ネットカフェとか……?」

「ダメっス!」

即NGを出された。

「?」

「オレが許さないっス!」

「……」

どういう意味かわからず、首を傾げる。

「深夜は未成年入れないし!」

もっともなことを言われてしまった。

「……じゃあ、野宿します」

1日くらいなら風邪を引くことはないだろう。

「ダメっス!」

また即答された。

「……ではどうしろと?」

どうすればいいのかわからなくなり、黄瀬に尋ねる。

考え始めた黄瀬が一瞬こちらを見た後、再び視線を戻し、息をはいた。

「……じゃあ――」









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