黒より暗い白

□3匹目
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「――せ……――黄瀬」

「! な、何スか?」

慌てて顔をあげると呆れ顔の沢野が立っていた。

「話聞いてなかったのか?」

「ご、ごめん……」

「何て言うか……大丈夫か?」

「大丈夫っスよ。で、何スか?」

取り繕うように笑うと沢野は諦めたような顔をする。

「今度の実習、参加するかってこと話してたんだよ」

「実習って今朝担任が言ってたやつの?」

朝のホームルームで担任教師がそのようなことを言っていた気がした。

「そーそ。パン作りな! 春の!」

楽しそうに沢野が笑う。

「えー。めんどくないっスか? ねぇ、岬っち?」

岬に話をふったが読書中で反応すらしてくれなかった。

「無視しないで、傷つくから!」

「それが岬は、やるんだってさ」

沢野が意外そうに言いながら岬を見る。

「え!?」

「……俺がパン作っちゃダメなのかよ」

拗ねたような顔をして本からこちらへと視線を移した。

「そ、そんなことないっスけど……」

「岬やるなら俺もやろーかなって思って、黄瀬はどうかなーと」

「沢野もやるんスか?」

「まぁ、部活サボれるし」

ニシシ、と沢野が笑う。

「不純だな」

「岬だってぼっちはやだろ?」

「問題ない」

「またまた〜」

二人の会話を聞きながら何となく答える。

「オレはパスっスかねー」

「負けたばっかだしな」

岬が即座にそう言った。

「ひど!?」

「ははっ。まぁ、気が変わったら一緒にやろうぜ」

「申し込みは放課後までだけどな」

《やらないと思うけど》

今は何となくそんな気持ちにはなれなかった。






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