黒より暗い白

□2匹目
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「あ……」
「……ああ」

買い物を終えて教室へ戻ろうとしたが、反対側から歩いてきた人物を見て立ち止まった。

「よく会うっスね」

「そうですか?」

「今日は何買うつもりなんスか?」

先程、用事を済ませた購買部へ視線を移す。

「もち。チョココロネです」

胸の前で両手で握り拳を作って答える彼女に、指を差して教えた。

「売り切れてるっスけど」

「!?」

チョココロネが陳列されてあるはずの棚にはすでにチョココロネはない。

《……そんな絶望したような顔しなくても……》

肩を落とした彼女にため息混じりで尋ねた。

「……つーか、他のパンは食べないわけ?」

「え?」

何のことを言っているのかわからないような顔をされる。

「チョコのパンなんてたくさんあるじゃないっスか」

「チョココロネの代用品はありませんっ」

思っていた以上の声の大きさが出てしまった。

「はあ」

理解できない顔をされたので息をはいてからチョココロネの素晴らしさを語り始める。

「まるで巻き貝のごとくの美しいフォルム。中までしっかり詰まっていたり控えめに入っていたりと個性溢れる中身。それによって食べ方も変えなくてはいけないデリケートさ。それと――」

「あー! もういいっスよ! わかったっス、オレが悪かったっスから」

慌てた様子で黄瀬が止められる。

「? はい」

何故かどっと疲れた顔をされた。

「とりあえず、他のパンも食べた方がいいっスよ」

「……今日のところはあきらめて帰ります」

とぼとぼと回れ右をして教室へ戻ろうとする。

「……変な奴……」

そう言われた気がしたが大して気にならなかったので振り返らずに戻った。






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