小説(大石×菊丸)
□遊園地無料招待券2(大菊(大石viewpoint))
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大石×菊丸(大石viewpoint)
「なあ、大石、週末遊びに行かない?たまにはさ!」
部活が終わった午後六時過ぎ。
眠たそうに欠伸をしながら、隣で英二が言った。
「姉ちゃんに貰った遊園地の無料招待券が今週末までなんだよ〜」
遊園地とは、少し遠くに出来た新しいところだ。
「どうせなら使わないと勿体無いだろ?土曜日どう?暇?」
英二が腕に捕まりながら言う。
「離せって英二、こらこら、重いよ」
「大石が行くって言ってくれなきゃ離さないもんねーっ」
いたずらっぽく笑う。
「わかったわかった。俺も土曜日は暇だから、大丈夫だよ」
俺が苦笑しながら了承すると、途端に英二は嬉しそうな顔をして飛び跳ねる。
「やったあ!大石大好き!」
俺も。好き。
俺も好き。けれど、英二が俺に抱いてくれている好きとはきっと、違う好き。
「ははは、俺も好き。俺も、大好きだよ」
英二も俺を好きだって言ってくれた。
それは、すごく嬉しいことのはずなのに。
「どうして、俺は素直に喜べないんだろうな……」
独り言、を言っていた。
「え?」
「あ、いや、なんでもないよ」
そう。なんでもない。
「……そっか」
俺の抱く感情はきっと、やましいものだから、英二には感じとってほしくない。
「なあ、大石……」
恥ずかしい。自分が恥ずかしい。
「俺な……」
俺も、英二も、男なのに。
どうして―……
「大石が好きだよ」
「……え?あ、うん」
一瞬、戸惑った。
英二の言う、好きが俺と同じ好きじゃないことくらい、わかっていたはずなのに。
「大石のこと、好きだよ!大好きだよ!」
「……ああ、ありがとう」
どうして、期待してしまったんだろう。
「俺、大石が一番大切な友達だから!」
……どうして、好きになってしまったんだろう。
俺達は、友達でいなくちゃいけなかったのに……。