永久なる絆を紡ぎだせ
□異邦の影を探しだせ 参
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数年間無人だというその邸を一目見て、昌浩と永久は敷地に入っていく。
丈の長い草を掻き分けて庭に分け入ると、今にも崩れそうな家屋があった。
家屋のすぐ前には砂がまかれていて、草はあまり生えてはいない。
そこまでたどり着き、昌浩はひそやかにささやいた。
「・・・永久、もっくん、なんか変だ」
永久と物の怪は答えず、前を見据えて敵意を剝き出しにしている。
昌浩はかまわずに続けた。
「だって、虫の声が聞こえない」
通常ならばうるさい程響いているはずの音色が、何ひとつ。
物の怪が喉を鳴らした。低くうなって、荒れはてた邸の奥をすさまじい眼光で凝視する。額の模様が紅く紅く燃え上がる。
瞬間、甚大な妖気が邸の内部から湧きあがり、荒れた建物を粉砕した。
昌浩と永久はとっさに腕で顔を覆った。
す
さまじい爆風が襲ってくる。
「もっくん_____!」
昌浩の悲鳴が上がると同時に、真紅の炎が落下してくる破片を飲み込み跳ね上げた。
本性を現した紅蓮は金の双眸をきらめかせた。
その瞬間を見ていた永久は、晴明が言っていたことを思い出した。
己の配下の式神たちは十二神将と言って、それぞれが五行のいずれかの性を持っているのだと。
そして昌浩についているのは、最強にして最凶の神将。
名は、十二神将火将騰蛇
昌浩は注意深く妖異の群れを観察した。
どこかに統括している親玉がいるはず。どれだ。
距離を保ちながら、ゆるやかに視線だけをめぐらせて、一点でそれを止めた。
その姿は、子牛に似ている。
だがこの間の異形とはまるで違う。妖気が感じられない。
『・・・ちょうどいい』
昌浩と永久は驚愕した。
化け物が、その姿を変える。子牛のようだった姿が大きく膨れ上がり、全身に模様が浮かぶ。
月光を受けてきらきらと輝く毛並みは金と黒の縞。
しろがね色の眼は氷刃のごとくきらめいて、口元に白い牙を覗かせ、四肢の先には長く鋭利な爪をひっさげ、大鷲の翼がばさりと大きく広がった。