おはなし
□お昼ご飯
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屋上に着いた。
今日は人が少ないみたいだ。
「おい、藤崎。どういうつもりだ!!」
「どういうって…ただ、一緒に飯食いたいなって思っただけだ。…嫌、だったか…?」
そんなわけない、嬉しい。
なんて恥ずかしくて言えないが…。
「…嫌、では…ない…///」
「本当か!!」
藤崎はボクのひねくれた言葉でも、純粋に、目を輝かせて喜んでくれる。
「嘘は嫌いだ。」
「じゃ、じゃあ、食おうぜ!!///」
嬉しそうに、少し頬を赤く染めながら座る。
「ああ…///」
ボクもつられて少し赤くなってしまう。
そしてボクも座って、弁当に手を伸ばそうとしたその時。
「……あ。」
重大な事に気付く。
「どうした、椿?」
「弁当…。」
「あ…。」
いきなり藤崎に連れられ来たのだから、当然と言えば当然だ。
「仕方ない、取りに…」
「ちょっと待てっ。」
「ん?」
立ち上がろうとした瞬間、藤崎に呼び止められた。
「俺の…分けるよ。」
突然の提案に、少し戸惑う。
「え…いいのか?」
「ああ。」
取りに行くのは確かに面倒だし、その…時間も勿体無いからな。
「では…お言葉に甘えさせてもらおう。」
「ああ!!…じゃあ、その…あ、あーん…///」
「はぁっ!?///」
あまりの恥ずかしい言葉に、自分の耳を疑った。
「一回ぐらいいいだろ?」
「断る!!」
屋上には、少なからず人がいる。
もし見られたら…。
「じゃあ、椿が俺にしてくれよ。」
「はっ!?///」
「どっちかでいいから、な?」
どっちかって…どっちも恥ずかしいじゃないか!!
…だが、どちらか選ばない限り、藤崎は納得してはくれないだろう。
「………ボクが、食べる…///」
「…〜っ!!」
藤崎の顔が、みるみるうちに輝いたものになっていく。
「じゃ、じゃあ、あーん!!」
藤崎が嬉しそうにおかずを差し出す。
「………あー、ん…///」
ボクは箸から、おかずを口で受け取った。
「どうだ?」
「うまい…。」
「そっか、よかった!!」
…そう、うまいのはいいのだが…
もう少し…食いたい…。
だが、もう一回あれをやるのも無理だし、それ以前に、もっと欲しいと言うのも悪い気がする。
…どうするべきか…。
「ほら、やるよ。」
「へ…?」
「オレはもう食ったし、あとはやるよ。」
「あ、ありがとう…。」
…不覚にも、少し感動してしまった…