Tales of Tour
□ルーチェ・ラザリス
1ページ/4ページ
クレイルの放った剣閃は女の持っていた爆弾だけを斬った。
「爆弾も無くなったぞ、どうする?」
「違う爆弾に点火すれば、この程度!」
ルーチェは、新しい爆弾に火をつけ、クレイルに投げつけた。
その爆発音と煙に気付いた歓楽街の人間が賭博にわらわらと集まり、その一部の人間が、火事だと騒ぎ立てた。
「あの、バカ女…騒ぎを大きくしやがって!」
クレイルは、次の爆弾に火をつけようとしていた女の体を掴み、手錠をはめた。
クレイルは、賭博仲間の裏の人間たちに野次馬の人払いを任せ、女を近くの椅子に座らせ、刃物を持った二人組を指さして言った。
「見ろ、明らかにこっちだろ犯人は」
「でもあなた髪掴んでたし…」
クレイルはバカにしたようにフンっと鼻で笑って自分の頭のこめかみの部分をトントンと叩いて言った。
「髪掴んでる人間は皆犯人に見えるのか?お前のここはスカスカだ…」
女は、クレイルのセリフを遮るように、クレイルの着崩した上着を指さして叫んだ。
「あ、騎士団の制服!あなた、騎士団だったんだね!」
クレイルはイラッとしながら、「ああ、そうだけど?」と、言うと女は、あなたたちねぇ!といきなり説教を始めた。
「人のため人のためって口ばっかりじゃない!本当に苦しんでる人をちゃんと見なさいよ!そう言うところがダメなのよ!それとも何?あんたらは魔物倒してればいいの?なら、魔物討伐隊って名前変えたら!」
クレイルは、女の説教が一段落すると、「おい」と面倒臭そうに話しかけた。
「何よ、文句があるなら言ってみなさい!ルーチェ・ラザリス逃げも隠れもしないわよ!」
クレイルは、呆れたように「違うだろ」と言うと、言葉を続けた。
「お前の騎士団に対する不満とか、名前とかの前に言うべきことがあるだろう?」
「?」
クレイルはこの女と話してると調子が狂うと考えながら、できるだけそれを表情に出さないように、話を続けた。
「間違えて襲ったんだから、『ごめんなさい』の一言を言え!」
「…あっ」
「『あっ』じゃねぇよ、マイワールドに入るやつだな…友達いないだろ?」
「失礼ね!いるわよ!」
クレイルは、「はいはい」と流すように言うと、ルーチェの腕についていた、手錠を外した。