浮気男と女王様

□邂逅…全2P
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 母が産んだ俺が目の前に居ても、もう俺が母さんの目に映る事は無い。

 あの日母さんの手を振りほどいたあの日。

 母さんの『翔平』は人形へと変わったのだ……。

 それは悲しくもあり、母にとっての俺の価値はそれだけなんだと思わせるには充分で、でもそれでも俺は毎月母に会いに通っている。

 いつか人形じゃない俺を見てくれるかも知れない希望を抱きながら。

 そして中学に入学し、自分の意志で部活を選ぶ自由を得た俺は空手部に入った。

 可愛い、綺麗。と言う自分を変えたくて男らしい部活を選んだが、それが間違いだった。

 男臭い中に異質な存在は色んな意味で目につく。

 その目が異性に向ける物と同じ性欲的な眼差しに為るにはそう時間は必要としなかった……。

 先輩数名に何度か襲われ掛かったが返り討ちにし空手部を退部した。が空手は続けた。

 体を鍛えるのは好きだったから。それが思いの外役に立ったのは言うまでも無い。


 彼女持ちの親友が言うには

『見た目もだけど、翔平の目ってなんか色っぽいんだよ。その右目の泣き黒子が何とも言えない』

『泣き黒子?こんなもんが色気に関係するとは知らなかった。ゴミが付いてんのと変わんないだろ。っつうかお前に色っぽいって言われんのは気持ち悪い』

『しゃぁねぇよ。色っぽいのは事実だし。世界に俺と翔平しか居なかったら俺翔平なら抱けるぜ』

『……紗弥加に言ってやろ。お前の彼氏にセクハラされたって』

 親友、里原[サトハラ]の言葉通り泣き黒子の効果は絶大で年と共に襲われる回数は増えて行き、必然的に火の粉を払う俺の力量も上がって行く。

 多勢に無勢も熟せる程に……

 そんな生活に嫌気がさし、それなら学校の敷地内に寮がある学校に入れば襲われるにしろ相手は同じ学校の生徒。

 襲って来た何人かを返り討ちにしていれば噂に為り襲ってこようなど考える輩の人数は減るだろう。

 そうなれば平穏な生活が手に入る、条件に合ったのが偶々この学校だったのだ。

 里原には『全寮制の男子校は……』と苦い顔をされたが不特定多数に警戒しながら生活するなら限られた人数を警戒する方が楽だと俺は考えそのまま志望校を変えず入学した矢先同室があんな奴だとは




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