私の可愛い御主人様

□変化
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 そんな贅沢な時間を満喫し胃袋も心も満足した暁がフォークを置く。

「ごちそうさまでした」

 アップルタルトやスコーンは完食。少量な焼き菓子とサンドイッチを残し満足な笑みを浮かべる暁の口元に昴の手が伸びる。

 唇を掠めアップルタルトに大量に乗せられた温かなカスタードクリームを指で拭う。

「暁様。16歳になられたのですから口元にクリームを食べさせる真似はご卒業なさっては如何でしょうか?」

 白い手袋に薄い黄色をしたカスタードを見せ微笑む昴の手を掴み自身の口元に近付けた暁は『パクッ』と言う擬音が聞こえるほど綺麗な円口で昴の指を銜え先端に乗るカスタードを舌で舐め取る。

 暁の舌の感触は手袋一枚分の隔たりがあると言うのに昴の肌に直接伝わる。

 全神経が指先に集中し、そこから全身を駆け巡る熱が生み出されて行く。

「昴の意地悪。小言はいやだよ、せっかく美味しいものを食べたのに気分が悪くなる」

「でしたら小言を言われない食べ方を身に付けて下さい。もうお子様では無いのですから」

 食べ終えた食器を片付けカートを押し昴が退室すると同時に向けられクッションがぶつけられる。

「昴のバカ!!意地悪!!」

 癇癪を起こし喚く暁の声は扉を隔てた昴の耳にも微かに届く。

「暁様に恋愛感情を抱くような不埒な私は暁様が思う以上に馬鹿でどうしようも無い人間なのですよ」

 呟き歩き出す昴の足が止まり他の指先より濃くなった先程暁が口に含んだ指先に視線が向けられる。

「アレぐらいで欲情するとは……これからどうしたものか」

 暁が自分に向けている感情が執事として或いは兄の様な存在としての信頼の想いだと言う事は確認せずとも明らか。

 絶対的な信頼を向けていた相手が実は自分を恋愛対象、性的対象として見ていたと知ったら今まで築き上げた関係性も崩壊させてしまう。

 同性の時点でかなり問題があるのだから崩壊したら最後、修復は不可能。

 だからと言って一番信頼がおける執事として仕えたままで居る訳にも行かない。

 16歳を迎えた暁にはこれから本格的に婚約者を決めるためのお見合いが予定されている。

 押しに弱く、断る事が苦手な暁の事だ一回目のお見合いで婚約者が早々に決まってしまう可能性がかなり高い。




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