私の可愛い御主人様

□誕生日…3P
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 頬に残る柔らかな頬の感触、耳底に残る水音。主である暁からの最上の感謝を受けた昴の顔は苦悶に歪んでいる。

「昴?」

 昴の表情に気付いた暁は訝しめ声音で昴に声を掛けた。
 そこで漸く自分の反応に気付いた昴はいつもと変わらない笑みを浮かべる。

「失礼致しました。暁様からこのような感謝をされるとは思って居りませんでしたから少し驚いてしまいました」

「驚いたの?」

「はい。さぁ、着替えの続きをしてしまいましょう」

 先程の昴の表情が驚いただけとは思えず訝しんだ暁だったが昴が肯定したことでその思いは消えて無くなる。

 暁の昴への信頼は絶対なのだ。昴が違うと言ったらそれは間違い。そこに一点の曇りも無く純粋に昴を信じ昴の言動に疑いも抱かない、そう昴が暁を育ててきたのだ。

 それは暁の自我が目覚めた後も変わらない昴が16年の歳月を築いてきた関係。

 付き従うのは昴だが精神的な面では暁の方が昴を頼りにしている。

 ワイシャツを脱がし終えスラックスのフロントに手を掛けボタンを外す。

 スラックスを踝まで下げれば昴が声を掛けるまでも無く暁が片方ずつ足を上げスラックスを脱がしやすい様アシストする。

 淀み無い阿吽の呼吸でなされた一つ一つの動作が長年の関係性を物語っていた。

 ワイシャツと共に直ぐ横のベッドの上に並べられたタキシードの隣に並べられた寝巻を手に再び暁と対峙する昴の目の前には染み一つ無く木苺のように可愛らしい実を二つ晒す純白のブリーフ姿の暁が佇む。

 見られる事に慣れた暁は自身の半裸姿を繁々と見つめる昴の眼差しに動じはしないが急に動きを止めた昴を訝しみ首を傾げる。

 (やっぱり今日の昴はいつもと違う気がする?ボクの気のせいかな)

「昴、もし何か言いたいことがあるなら言って。ボク今日のパーティで失敗していた?」

「まさか。今日の暁様も見惚れてしまうほどに素敵で非の打ち所などありませんでしたよ」

「だったらさっきからオカシイのはどうして?」

「申し上げた筈です。見惚れてしまっていたと。御美しく成長された暁様に目を奪われていただけです」

 老若男女を赤面させる威力がありそうな微笑みを浮かべ手にした寝巻きを暁に着せていく。

 誰よりも昴の微笑みに免疫がある暁の頬さへも真っ赤に色付かせた昴は三度作業を止める事無く暁の着替えを終えた。




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