浮気男と女王様

□馬鹿犬と女王様…全4P
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 腕の中で眠る恋人では無い男。

 起こさない様にそっと腕を引き抜きベッドを降り散らばった衣服を身に付け部屋を後にする。

 消灯時間等とっくに過ぎた深夜、向かうは恋人が眠る部屋の扉の前。

 そっと手を触れ、眸を閉じれば容易に浮かぶ強気な恋人の姿。

 こんなにも求めて、愛しているのに、俺は自分の欲求を抑える事が出来ず目の前の誘惑に抗う事が出来ず不貞行為を続ける。

 翔平は気付いている。気付いて居ない訳が無い、寮長である翔平の耳に入らない訳が無いのだから。

 知っていて何も言わないのは俺を許しているから?それとも俺を見捨てて居るから?

 始まりは寮の部屋替え。

 毎日、毎晩抱いていた翔平が居ない……体は快楽を求め疼き。

 最初は翔平の元に行っていたが外面は良い翔平は何かと頼まれやすくタイミングがずれ逢いたい時に逢えなくなる事が増えて行った。

 そのたびに『すまない』と謝罪される事に心苦しくなる。忙しい時間を裂き俺に合わせようとしてくれる翔平からは口に出さず共俺への愛情を感じていた。

 だから大丈夫だと思ったんだ、翔平となら当たり前の恋愛が出来るって。何せ俺が初めて恋人にしたいと思った相手だったんだから。

 初めて会ったあの日、強気な眼差しに俺はひれ伏した。戦わずに白旗を上げた。

 こいつが手に入るなら他は何も要らねぇとさえ思った。

 そして手に入った時の至福の感情は今迄に味わった事が無い程に俺を満たし、幸せにしてくれた……。

 だが、離れる時間、翔平の温度が薄れれば薄れる程に俺は別の温もりを求め始めた。

 この行為が導くのは別れかも知れないのに、それでも俺は自分の欲求を留める事が出来ず今に至る。

 そして、翔平からの決定的な言葉を告げられるのを避けるように距離を置き始めた。

 今日だってそうだ、翔平から話がある。と言われ部屋に来るタイミングに合わせ同室の後輩を抱いた。

 翔平が部屋をノックする事を避けるように部屋の扉に後輩の背を押し付け、声を上げさせた。

 結果、翔平が部屋を訪れる事は無かったが行為の最中を目の当たりにはさせただろう。




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