浮気男と女王様

□軋み2…全1P
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 こうして始まった俺と晴海の関係。

 次の日目覚めた俺に晴海は『翔平は昨日から俺の恋人だからな、もう二度と他のヤツに触らせんなよ』と爽やかな笑顔で告げ、朝から盛りやがった。

 直接的な『好き』だとか『愛してる』の言葉は約3年経った今も未だに言われた事は無いが、晴海の唯一の恋人と言う存在は俺だけ。

 恋人関係に為った後の晴海は夜中出歩く事も無くなり、毎晩俺のベッドか俺を抱いたまま自分のベッドで過ごしていた。

 分かったのは晴海が人一倍性欲が強く(これはある意味病気のいきに達している)、快楽に弱い事。

 2年に為り行われた部屋替え後、俺と離れた晴海が週、数回の短い時間の逢瀬で満足出来る訳無く寮を抜け出す回数、同室の相手に手を出して行く様に為るにはそう時間が掛からなかった。

 分かっていた、獣が唯一人に尾を振り、傅[カシズ]く事が無い事を。

 分かっていたから、その事実を知った時も傷んだ胸に目を瞑る事が出来ていた。

 否、そう思い込む事で自分を納得させていただけだったのかも知れない。

 そうやって誤魔化し続けて来た傷みを、扉の先で行われて居る行為が依り深いモノに変えて行く。

 別れる。その選択肢は最初から俺は用意していない。

 晴海を求めた時俺は晴海になら傷付けられても構わないと覚悟したから。

 だから晴海が俺を手放す迄はこの傷みに目を瞑る。

 これは俺が選んだ事だから……。

 ――なぁ、晴海。お前の恋人ってどんな存在?

 決して本人には問う事が無い質問を口にし軋みが止んだ扉を後にし、静かに踵を返す。




 

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