浮気男と女王様

□番犬…全6P
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 進級を間近に控える程月日は流れても俺と藤本の関係は変わっては居なかった。

 藤本は週の半分以上を寮のベッドを使わず相も変わらずセフレの間を渡り歩いて居る。

 別にその事に苛立ちを感じる事は無かった、俺は藤本の気持ちにさえ向き合っていないのだから……。

 クラス委員等を押し付けられるとこういった行事に為ると何かと忙しく気付けば外は夕闇に染まる事も多々ある。

「はぁ……もうこんな時間か、たっく俺等が卒業する訳でも無いのに手間取らせやがって」

 長時間パソコンと向き合い続け凝り固まった体を解し悪態を吐く。

 口が悪いのも疲れているのだから仕方ないと言うもの。

「あっ、高梨。良かったまだ残っていたんだね」

 パソコン室の扉から顔を覗かせたのは現寮長。そして前生徒会長の波瀬[ハゼ]先輩。

 縁無しの眼鏡の奥には温和な双眸。そして人当たりの良い笑みを常に浮かべて居る波瀬先輩が俺は実のとこ苦手だったりする。

 告白されたからとかでは無く常に人当たりが良い人間なんて居るわけ無い。と捻くれた俺は思って居るから。

 胸の内でそんな事を思っていても外形にはそんな素振りも見せず俺も人当たりの良い笑みを投げ掛ける。

「波瀬先輩、どうしたんですか?」

「1年代表高梨だったよね、ちょっと会場の事で聞きたい事があるんだ時間大丈夫?」

「構いませんよ。何ですか?」

 今更雑用の一つや二つ増えても問題は無い。

 俺は手にしたファイルから会場の設置書類を取り出す。

「1年担当は此処と此処ですね。何か問題でもありましたか?」

「ちょっと見せて貰って良いかな……ああ、此処だ。どうやら会場の担当に渡った書類と位置が食い違ってるみたいだ」

 先輩が言うには来賓席の位置が違っていて今のままでは来賓数と席が合わないとの事

 俺的にはそんな事は俺のミスじゃなく設置担当者に書類を渡したヤツのミスで俺には関わりが無いと言ってしまいとこだが波瀬先輩が1年代表の俺を探していたと言う事は俺にこのミスを処理しろ(命令形で無いにしろ)と言う事なんだろう。




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