私の可愛い御主人様

□変化
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 親に対する言い草とは思えない言葉を平然と告げた昴の耳に北斗の長い溜息が届く。

「本当に可愛げが無い、誰に似たのだか」

「父さんにでしょ。そんな事より何の用ですか?仕事は山ほどあるので早く用件を御願い致します」

「分かった。見合いの話だ」

「暁様の!?」

 何れ来るだろうとは予想していたが誕生日からまだひと月。予想より早過ぎる。

 昴の動揺は普段変わる事が無い声音にありありと出ていた、近くで待機していた周防が驚くほどに普段ではありえない姿を晒している事実に今の昴は気付いても居ないだろう。

「勘違いするな、暁さまにではない。昴、お前のだ」

 北斗の返答にあからさまに安堵し胸の動揺をすぐさま落ち着かせた昴は最初と変わらない落ち着いた声音で断りの言葉を紡いだ。

「駄目だ。お前の暁様が独り立ち出来るまでと言う意見にピッタリの相手だ今回は絶対に会え」

「嫌です」

「駄目だと言っているだろ!」

「そうですか、分かりました見合いをすればいいんですね」

 もっと口論になることを覚悟していた北斗は昴の拍子抜けするほど簡単に見合いを承諾した事に虚を付かれたが弁が立つ昴と言い争いを長引かせずに済んだ事に内心安堵し見合いの日時、場所を伝え始める。

「11月24日、了解致しました」

「無礼の無いように頼んだぞ」

「分かりました。御相手の写真や情報は頂けるのでしょうか」

「ああ、お前のプライベート用のパソコンに送っておく」

「では私は仕事に戻ります」

 電話先ではまだ北斗が何かを口にしていたが昴は全く気にせず電話を切り周防に電話を渡す。

「椎名さん御見合いなさるのですか?」

「そうみたいだな」

「そんな他人事のように……」

「受けないと電話を切りそうも無かったから仕方ない」

 不毛な言い合いをするくらいなら見合いを受けるだけなら受けてやろう、見合いを断るなとは一言も言われていないのだから。

 そう昴は見合いをしてもそれを纏める気は一切無いのだ北斗の『無礼の無いように』の一言が断るに該当していたとしても直接的に言われていないなら後でどうにでも言い訳は出来る。

 無礼の無いように断りさえすればいい、北斗があそこまで引き下がらないのは相当此方の事情に理解がある相手なのだろう。

 今までの相手は昴の仕事を理解がして居る様で理解不足だった所があり北斗も慎重になっていた見合い話を持ち出したことで明らか。

 そうだとしても断り方は幾らでもある。相手には申し訳ないが受ける気も無い見合いを受けたのだが
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