シャーマンキング

□無題
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なんで....
あの子が居なければ....
あの子さえ...居なければ....

この人は死ぬことなかったのに...

この人は死なずに生きていたはずなのに....


名無しさんさえ....


黒い喪服を着た私の脳に、直接語りかけるようにして聞こえてきた母の言葉。
それは、6歳の私でもわかる、怨嗟の言葉だった。

長いお葬式が終わり、父が死んだこともいまいち実感がなく、ただ流れて行く景色をぼーっと見ていた。
そんな時、ふと母の方に目を移す。
彼女は、来てくれた方々に堅苦しい挨拶をしながら...泣いていた。

ここ6年。母が泣いたのは、初めてだった。

それが珍しく、食い入るように見つめた時だった。
ーーあの子さえ居なければ....

その怨嗟の言葉が心に響いたのだった。
私は、訳がわからず、一歩も動けなかったことを覚えている。


....そして、今。
父のお葬式から6年

私は、中学を入学し、部活にも入り、テストではそこそこの成績をとっていた。
いわゆる、どこにでもいる女子中学生だ。

6年前のあの時から、母とは一定の距離があった。
年や反抗期ではない。
母の心の声が聞こえたのは今でも黙っている。
だけど、何かしらの壁がある。

それは父の死という壁なんだなと思いきかせていた。

ー死んだ人は生き返らない。
だから母との溝が埋まることもないだろう。

6年前から得たものはそれだけではなかった。
ー・・・読心術
名無しさんがつけた名前だ。
その名の通り、人の心がわかる。

本能的にか、そのことは誰にも言ったことがない。

この力があるおかげで、名無しさんの周りには、数少ない真の理解者しかいなかった。
が、名無しさんにはそれで十分だった。

自らの中ではさまざまな感情が渦巻いていたが、それを表にだすことはしなかった。



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