TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□重なる三本目の道
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「う、うわぁああ!」
「カロル! 大丈夫です!?」

ゴーレムの巨腕に殴られ、カロル少年の小さな身体は大きな武器と共に吹き飛んでいった。桃色の髪の少女、エステルは彼に治癒術を施そうと急ぎ駆け寄って行く。

「何やってんのよ、ガキんちょ! ……目覚めよ、無慈悲で名も無き茨の女王! アイヴィーラッシュ!!」
「円月!」

カロルと入れ替わるようにして、クリティア族の槍使い、ジュディスがゴーレムへ向かっていく。それを後方から援護しようと、魔導少女リタが少年を叱咤しながらも魔術を唱えた。

発動した術は棘をつけたツルとなってゴーレムに絡みつき、動きを止めている隙を狙って、ジュディスの槍が華麗に決まった。

だが、頑丈なゴーレム相手に、それは有効打とはならなかったらしい。彼女はその場から飛び退くと、槍を持つ手に痺れを感じて小さく舌を打った。

「やっぱり、見た目どおり固いのね」
「ワンワンッ!」

その時、短剣をくわえ戦う一匹の成犬、ラピードの声が響いた。

直後、ゴーレムはそれまでのドシンドシンと行進するようなゆっくりした動きから、突如、退避するのに精一杯というくらいのスピードでその巨大な全身を回転させながら彼らに襲い掛かってきた。ジュディスやリタらは急いでその場を離れるが、治癒術をかけ終えたばかりのエステルとカロルは、まだその場から動けずにいた。

「エステリーゼ様!!」

そんな二人へと駆け寄る二つの影があった。彼らはそれぞれ仲間をその場から連れ出し、ゴーレムの攻撃から難を逃れることに成功した。

「エステリーゼ様、お怪我は?」
「フレン! ありがとうございます」
「ふ〜、間一髪だったわね」
「レイヴン!!」

カロルは自分を助けてくれたおっさん――レイヴンを嬉しそうに見上げた。レイヴンはそれに微笑で返すと、気合を入れろよ、と少年の頭をポンと叩く。

その頃、ゴーレムは再びゆっくりとした動作に戻っており、海賊のような格好をした少女、パティの銃撃を受けていた。だが、その頑丈なボディのためか、やはり効果は薄いようだ。

「むぅ、これでは埒が明かんのじゃ」

可愛い顔をしかめて、パティはゴーレムを遠くから観察する。どこかに弱点はないかと探るが、ただゴーレムと睨めっこするだけで終わってしまったようだ。

「ユーリ、どうする?」

そう言って、打開策を求めるフレンの目は、幼馴染へと向けられた。

黒髪をなびかせて鋭い瞳を敵へと向ける、左腕に金の腕輪――かつて自分の上司の物だった武装魔導器――を身につけた青年、ユーリ。その口元には笑みがあった。
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