TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□決着
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しかし、二人の少年はそれに従おうとはしない。

「あんた、大丈夫か?」
「……何がだ?」
「あんた、泣いてないだろ? 隊長が死んだ時も、ずっと……」

ユーリが口にした内容に、クレイは驚いたように振り返った。

彼らは気付いていた。ナイレンとの別れの時も、他の隊員たちがナイレンの死を悼み、涙を流していた時も、ユーリやフレンが涙した時も、彼女だけはまだ、悲しみを面に出していなかった。声を取り戻した代わりに、涙を失ったわけではないだろうに。

そう思っていたその時、それまで気丈だったクレイの肩がわずかに震えた。悲しみを塞き止めていたダムが、今きっかけを与えられて壊れてしまったように。

「ユーリ。……ちょっと魔導器、貸してくれない?」
「ああ」

かすかに震える彼女の声にユーリは頷き、左腕を差し出した。少年の腕で輝く赤い魔核。クレイはそこに、自身の魔導器の魔核をこつんと当てた。それはナイレンとの間で行っていた、二人の間の絆を確かめ合う挨拶のようなものだった。

「二人が――」

それぞれの魔核をぶつけたまま、クレイはしばし俯き、沈黙した。

それから静かに、顔を上げながら口を開くと、ユーリとフレンは彼女の顔に視線を向けた。

「お前たち二人がナイレン・フェドロックの遺志を継いでくれるなら、何も悲しむ必要はない。お前たちの中で親父が生き続けるんだから。そうだろう?」

右の藍色の瞳から、一滴の涙が伝った。

けれど、その表情にあるのは悲しみではなく、希望を宿した笑みだった。クレイはそう言って、二人の顔を見つめ微笑んだ。

そんな彼女の言葉に、ユーリとフレンは微笑み、力強く頷いた。
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