TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□決着
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「クレイさん!」

その時、フレンが上を見て、驚いたように叫んだ。階段上の本棚の中から現れたのは、抜き身の剣を手にしたクレイだった。

「あんた、いつからそこに?」
「お前たちが来る前からだ」

ユーリも命の恩人がそこにいたことに驚いており、頬から流れる血を拭いながら尋ねた。クレイは剣を収めながら、階段をゆっくりと下りてくる。

「お前たちがコイツに問い詰めたのと同じタイミングで、問答無用に葬ろうと思ってた」
「それならさっさと加勢してくれよ」
「加勢できる隙がなかった。お前らが好き勝手暴れまわったおかげで」
「クレイさん、ガリスタのこと気付いて……?」
「ああ。今回の件にコイツが関わってたのは、遺跡に向かう前から知っていた。コイツはあのままエアルが濃くなり続ければ、魔導器が暴発することを知っていた。それにも関わらず親父に言わねえってことは、シゾンタニアがどうなろうが、その元凶を片付ける気がなかったってことだろう? そういう男だってわかった時から、いずれランバート達の仇を討つつもりだった。……まさか、ファイナスさんまで、とは思わなかったけどな」

クレイは歯をギリッと鳴らしながら、本を真っ赤に染め上げていくガリスタを睨みつけた。その行為はもはや意味など成さないが、そうせずにはいられないほどの嫌悪感を抱いていた。

「それより、フレン!」

すると突然、クレイは怒鳴り声を出してフレンを睨みつけた。それには名を呼ばれた彼だけではなく、隣のユーリまでもが不意を突かれたためか驚き、肩をびくつかせた。だが彼女は構わず一歩大きく踏み出し、そのままの口調で続けた。

「もう、二度とこんなことするな。親父はお前に帝国の、騎士団の未来を託したんだ。そんな男が私怨で動くな。悪を裁けぬ法なら、上に上りつめて法を正せ」
「……はい」
「ユーリ!」

頭に血が上っていたとはいえ、突発的な行動を恥じたのか、フレンは静かに頭を下げた。

それを見るとクレイは、今度はその隣へ視線を向けた。名を呼ばれた途端、柄にもなく背筋を伸ばしてしまったユーリだったが、そんな彼に向けられたのは、優しく肩に置かれた手のひらと悲しげな言葉だった。

「お前は背負い過ぎるな。ランバートのことだけで十分だろ? この一件は背負うな。忘れろ。そして、前を見て生きろ。それが、死んでった奴らの供養になる」
「クレイ……」
「後始末はしてやる。お前らは、さっさとここから出て行きな」

それだけ言うと、クレイはもう用は済んだとばかりにしっしと手を振り、二人を書庫から追い出そうと背を向けた。
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