TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□託された正義
2ページ/4ページ


***



ナイレン・フェドロックの葬儀は、それから数日もしないうちに取り行われた。

「形式とはいえ、何も入ってないのにな……」

そう呟くユーリは、執務室でフレンと二人で棺桶を見つめていた。そこに本来入るべき人物の代わりに、中は少ない遺品で埋められている。そしてそこへ、普段は着崩している襟元をしっかりと閉めたユーリの手で、今は共にいるのだろうか、先に逝った家族との思い出の写真も収められた。

「隊長、任務を優先して家族を守れなかったんだってさ。お前の親父さんを尊敬してるって言ってたぞ」

あの日の夜に聞いた話。直接フレンの耳に入ることのなかったそれを、ユーリは静かに語った。それを聞いたフレンの瞳は、写真の中のナイレンを見つめ、揺れていた。

「なんだ、まだ終わってないのか? 現場を保持しろとの命令が下っていただろう。アレクセイ閣下から預かる隊に手傷を負わせおって」

だが、そんな悲しみの中に、無粋に立ち入る者が現れた。フレンが帝都で一度出会った騎士団長の部下――グラダナである。兜を脱ぎながら部屋に入ってくるなり彼が口にしたのは、その場にいた二人と、もうここにはいない部屋の主への文句だった。

「無能め。街の人間を救ったヒーローにでもなったつもりか? こんな隊長の下では――貴様ぁあ!?」
「ユーリ! 駄目だユーリ!!」
「なんだてめぇ!! 今頃ノコノコと!!」
「貴様ぁ……歯ぁっ!!?」

ズカズカと歩み寄り、誰もいない棺桶に向かってグラダナは好き放題言い続けた。それを黙って見ていることが出来ない者が、すぐ隣にいることなど知らずに。

そしてやはり、頭に血をのぼらせたユーリは、グラダナの顔面を強く殴りつけた。慌ててフレンが怒りを堪え抑えにかかるが、ユーリの気が収まることはない。殴られた衝撃で床に転がったグラダナを睨みつけ、怒りにまかせて声を荒げる。一方、グラダナも殴られた顔を抑えてうめき声を上げるが、その時、折れた自分の歯が目に映り、また別の意味で声をあげた。

そこへユルギス、クレイ、エルヴィン、クリスが柩を運ぶため現れた。しかし部屋の入口で何事かと立ち止まった四人に、グラダナは立ち上がり、彼らにユーリがしでかしたことを指しながら無言で訴えた。

「棺を運びます。お前達も手伝え」

だが、ユルギスはそれに眉をしかめるだけで、それ以上何も言わずに作業に取り掛かった。二人の後輩に声をかけ、棺の蓋を閉じ、封をしていく。そしてクレイの手で棺の上に残された剣が置かれ、その上に赤い布をかけて覆われた。

「なんだ、この隊は!?」

彼らは憤慨するグラダナに目をかけることなく、黙って軽い棺を部屋から運び出して行った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ