TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□そして、託されしもの
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崩壊へのカウントダウンが進む中、ユーリがクレイたちのもとへと辿り着いた。残るはフレンと、シャスティルを背負うナイレンのみだ。

だがその時、巨大魔導器を囲うように、その四方八方で爆発が起こった。それはユーリ達とフレン達の間にも起き、爆発によって発生した煙が視界を遮ってしまう。

彼らの身を案じて緊張が走る中、その姿が再び現れた。フレンが、そしてわずかに遅れてナイレンとシャスティルが。

だが、そのわずかな時の差が彼らの命運を分けた。

煙をかき分け現れたフレンは、何かに躓いたようにその場に転げてしまった。突如崩れた足場にバランスを崩したのだ。そしてユーリ達の目の前で、彼を転ばした足場は、ナイレンとシャスティルを道連れに沈み始めたのだ。

「ユーーリィイイイ!!!」

その瞬間――まさに一瞬の判断だったに違いない――、沈みゆく地面を力強く踏みしめ、ナイレンは動かぬ少女の身体を、その目に映った少年の名を叫びながら高く投げ飛ばした。ユーリは手にしていた剣を放してその身体を受け止めるも、彼自身もその勢いに押されしりもちをついて倒れた。

「シャスティル? シャスティル!!」
「大丈夫、息してる!」

そんな彼の元へ、姉の身を案じたヒスカが駆け寄る。そんな彼女へシャスティルを預け、ユーリは崩れた床下を覗き込んだ。

「隊長!」

そしてそこにいるナイレンを呼び、息を呑んだ。

彼の姿はもう小さくなっていて、沈んだ先でいくらか落ちついている足場で、苦笑いを浮かべてユーリを見上げていたのだ。

「手ぇ出せ――うおっ!?」

だが、それでもまだ望みを捨ててはいなかった。今ならまだ助け出せる距離間が両者にあり、ユーリは身を乗り出して手を差し伸べた。

だが勢いに任せて手を伸ばしたことでバランスを崩し、上半身を危うく下へと落下させてしまった。

「俺らが抑えっから!」

しかし、それを寸前でフレンとエルヴィンが引き留めた。そしてエルヴィンはそう言って、アックスをユーリに手渡した。

ユーリは頷くと、今度は二人に支えられながら、アックスの柄をナイレンへと伸ばした。

「今、助ける! 今……くそっ!」
「無理だ。行け……」
「うっせぇ!! 手ぇ出せっつってんだよ」
「もう、動けねぇんだよ」

だが、そんな彼らにナイレンが告げるのは、静かな諦めだった。必死のユーリがその言葉に憤慨するように返すが、ナイレンは静かに言いながら左腕を上げて見せるだけだった。

そこはメルゾムと再会した時に、フレンを助けて負った傷が残る場所だった。鎧の下に隠されたそこは、すでに血を吸い上げて変色し、広がっていた。
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