TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□赤き異変の中枢
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しかし、ほっとしている暇はない。その爆発音に反応し、ゴーレムがこちらへと狙いを変えた。まだシャスティルたちは瓦礫に埋もれたままで、そこから逃げることはできない。

どうするべきか。ユーリたちの額に汗が伝った。

「ユーリ、お前を上まで投げる!」

その時、エルヴィンがユーリに向かってそう言い、ゴーレムの前まで駆けて行った。

「来い!!」

彼は言いながら構え、ユーリはそんな先輩のもとへ全力で走って行く。そして勢いよく組まれた両手に足をかければ、タイミングを合わせてエルヴィンが敵の頭上まで彼を投げ飛ばした。

呆然とする敵の上に見事着地すると、ユーリは片っ端から、剣を振り回してエアルの筋を斬っていった。そして最後の一撃をくらった時、糸の切れた操り人形は、瓦礫へと戻り崩れていった。

「ユーリーー!!」

その倒壊に呑みこまれたユーリ。埃が舞いあがって、彼の行方がよく見えない。彼を心配する、ヒスカの悲鳴に似た叫びだけが広間に響いた。

やがて視界が明け、煙の向こうに一際濃く赤くエアルで染まった空間が見え出した。その赤色の向こう側の少し手前で、ユーリはしっかりと、心配の声を上げたヒスカへ笑みを浮かべて立っていた。それを確認した仲間たちは次々と安堵の笑みを浮かべ、胸をなでおろした。瓦礫の山を登り、彼に歩み寄って行った。

「怪我、ねぇな?」
「ああ」

尋ねたナイレンに、ユーリは彼の顔も見ずに答えた。

それは彼の視線の先、エアルの最も濃い空間にある、あるモノが気がかりで仕方がなかったためだろう。


***



遺跡の最深部にあったもの。それはエアルを大量発生させている元凶。見上げるほどに巨大な、たった一つの魔導器だった。

「こいつでエアルを吸い上げて、魔核の代わりにしてるのか」

魔導器の下にある大きな穴。そこから大量のホースのような部品でエアルを吸引し、その巨大魔導器は稼働していた。

ナイレンたちは魔導器に近づき、この部屋の天井まで届きそうなそれを見上げていた。魔導器の最も高いところに楕円上の、人の目のようにも見える、また別の魔核らしい部品もある。それを目にしたナイレンは、わずかに表情を歪めた。

「ずいぶんと大掛かりな仕掛けだな」

そんな彼らの元に近づく少人数の団体。首を動かして声のした方を見ると、追いついたメルゾムたちが魔導器を見上げながら歩いてきていた。

「無事か?」
「一人やられちまった」
「そうか、すまん」

クレイはメルゾムの声に視線を移し、その後ろに立つ部下の姿を確認した。いなかったのはちょび髭の男だった。メルゾムは顔や声に表情は出さないものの、ナイレンはその心境を察し、彼に対し淡々と答えた。

「誰がこんなものを……」
「詮索は後だ。こいつでエアルの流れを遮断する」

魔導器を見上げ、疑問の声を上げるフレンにそう言うナイレンが荷物から取り出したのは、円盤のような形をした何かだった。
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