TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□覚悟と迷いと
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ユーリらは慌てて、回廊の奥へと飛び込んだ。すると今度は、床に転がった大量の欠片が一点に向かって転がり始めたのだ。その異変に気がつき、急いで回廊の先へと駆け出せば、欠片たちはいつのまにか巨大な岩となって、侵入者に向けられたトラップの如く、ユーリ達を押しつぶそうと向かってくる。

一行は全力で回廊を駆け抜けた。そして角を曲がった時、最後尾を走るユーリの後ろで、岩が正面の壁に激突し、崩れた音がした。それでも足を止めずに駆け続けた彼の目に、出口らしい外の光が漏れるのが映った。

「うわっ!?」

だが、勢いよくそこへ身を投げ出せば、そこにあったのは数メートル分の幅しかない足場と、その下へと続く断崖絶壁だった。

それに気付くのが少し遅れたユーリは、すでに空中へと片足を踏み出してしまっていた。なんとかバランスをとって戻ろうとした矢先、彼の努力を嘲笑うように足場が崩れた。

「くっ!」

彼の右手に持っていた盾が、遥か下の足場へと姿を消して行く。だが、彼の身が崖下に落ちることはなかった。

寸でのところで彼の手をつかんだのは、なんとフレンだった。クレイもその手助けに入り、自身も壁をよじ登るようにしてユーリは引き上げられた。

助かった直後、二人の少年は少しの間、地面に手をつき肩で息をしていた。一方、両者の目は、どこか意外なものを見たようにお互いの顔を捉えていた。そして、それはクレイも同様のようだった。ついさっきまで常に険悪なコミュニケーションしかなされていなかった者が、咄嗟にとれる行動だと思うことが難しかったからだ。

(何かが、変わり始める……)

まだはっきりと目に映ることはない何かを感じ、息を整えて立ち上がる二人を見つめながらクレイは思った。そして藍色の隻眼は、正面先にそびえ立つ赤い稲妻を発している塔へと静かに向けられた。
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