TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜
□覚悟と迷いと
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「準備いいか?」
湖面はエアルの影響なのか、赤く色づき、揺れている。援護班は術式を使い、ボウガンの発射準備を終えた。ナイレンの確認に頷くと、一行は突入班を先頭に、橋を渡り始めた。
すると、橋の中央まで来ないうちから、沼で遭遇したのと同じクリーチャーが複数、彼らを追いかけるように湖面から姿を現し始めた。
「来たぞ! 急げ!」
「お前の相手はこっちだよ!」
突入班の最後尾を走るナイレンが叫び、その後ろを駆けるユルギスらが魔導器やボウガンでクリーチャーへ攻撃していく。放たれたのは氷の矢で、それが命中したクリーチャーは氷漬けになって次々と崩れて沈んで行く。
「行くぞ!」
橋の上までやってきたクリーチャーの動きを止め、援護班の五人は、先を進み続ける突入班の後に続いた。
先に橋を渡り終えた突入班九人は、今度はナイレンを先頭に遺跡の中へと足を踏み入れていた。門のようになっているところをくぐり抜けると、見上げるほどに巨大な建築物が目の前に現れる。
「これからが本番だ。気ぃ抜くなよ!」
ナイレンが言い、一行はその建物の内部へと足を踏み入れた。
ところどころ長い年月のせいか崩れていた外に比べ、中は比較的しっかりと残っており、赤いエアルの粒子が漂っているのがよく見えた。
「隊長」
階下を覗きこんだフレンがナイレンを呼ぶ。彼がフレンと同じ場所を覗き込むと、奥へと続く回廊から、赤い粒子がこちらに流れている様子が目に入った。
「流れていますね」
「エアルの流れをたどろう」
そう言って一行は階段を下りてゆき、回廊の前であたりの様子を窺った。そしてエアル大量発生の元凶へと近づく緊張の中、ヒスカの目に奇妙なものが映った。
石。石造りであるこの遺跡のどこかが欠けたような、石の欠片。それが数メートル先で、ヒスカの目線より少し下の空中に浮いていた。
しばらくそれをじっと観察していたヒスカ。刹那、その石は何かにつるされていたように、天上へと一気に飛んでいった。
「どうした?」
ゆっくりと後ずさりながら、ヒスカは術式を魔導器にとり込ませた。近くにいたユーリはその様子に気付き、緊張した面持ちで彼女に声をかけた。
直後だった。先ほど彼らが下りてきた階段から響く、カツン、カツンと小さな乾いた規則的な音。それに他の隊員達も気がつき注意を向ければ、先ほどヒスカが目にした欠片が、不釣り合いなほど高く跳ね上がりながら階段を下りてきていた。
そして一番下まで降りてくると、跳ね上がった時の頂点の高さを維持したまま、一行の目の前へとひゅんと飛んでくる。そして今度は、警戒を続ける彼らの前で、床から伸びてきた赤く細い触手のようなものに捕らわれて床下へと呑みこまれていった。それを合図に、そこから回廊へと向かって、波が押し寄せるように足場が盛り上がり一行に襲いかかってきたのだ。
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