TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□覚悟と迷いと
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深く霧のかかった目の前の遺跡へとかかる橋の前。ナイレン隊はそこまで来て、足を止めた。

「さっきの沼の化け物は、動く物や音に反応してるようだった。ここから先は、隊を二つに分ける。橋を渡り遺跡内に行く班と、援護班だ。橋の向こう、遺跡の入り口まで援護。その場で待機。帰路を確保しろ。突入班の帰りを待て」
「隊長」

部下達の方に身体を向け、ナイレンはそう指示した。すると彼の言葉が終わるのと入れ替わるように、静かにナイレンを呼ぶ声が聞こえた。その場の全員が声の主へと視線を向ければ、そこにはナイレンを真っすぐに見つめる、黒い瞳に固い決意を宿したユーリがいた。

「ランバートの弔いをさせてくれ」

そして静かに紡がれた彼の言葉を、ナイレンは笑みを浮かべながら受け入れた。

「あてにしてるぜ。ユルギス、分けてくれ」
「はっ。ボウガン使用者は援護に回る。突入班は剣、アックス、防御魔法使用者。援護班、隊長からもらった術式を使う」

そして彼の指示により、ユルギスが隊の面々へ素早く指示を出した。それぞれが二つのグループに分かれて準備を進める中、ただ一人、フレンだけがその場から動かず立ちつくしていた。

「フレン!」

そんな彼をナイレンが呼んだ。それに応えるようにフレンが静かに面を上げれば、ナイレンは彼の顔をまっすぐ、だが一瞬だけ見つめると力強く、たった一言の指示を告げた。

「来い!」

フレンはその一言に、驚いたようにわずかに目を見開いた。

「フレン、こっちだ」
「納得してないんじゃないのか?」
「任務だからな」

だがすぐに表情を引き締めたその時、同じ班のエルヴィンに呼ばれた。それに従いフレンが向かえば、ユーリが憎まれ口を叩いて出迎えた。

だが、ナイレンは「納得してない」フレンを突入班に指名したのだ。その時点で、彼はもう覚悟を決めていた。フレンはユーリの発言を受け流し、ちらりとナイレンへと目を向けた。

ボウガンを装備している援護班の中で、ナイレンと彼に呼ばれたユルギスの二人だけが手をとめ、何かを話していた。フレンの立つ位置からは、彼らが何を話しているのかは耳に入って来ない。だが直後、黙ってナイレンの言葉を聞いていたユルギスが驚愕し、ナイレンへと顔を向けた。ナイレンが彼の肩を軽く叩いて離れていったところを見ると、そこで話は終わったのだろう。だがすっきりしないユルギスの表情だけがその場に残されていたのを、フレンはただ静かに見ていた。
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