TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□滅びの紅葉の森へ
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川上の遺跡で何らかの魔導器が作動し、それがエアルの大量発生を招いている可能性がある。天才魔導器研究家の言うことと言えど、全ては仮説にすぎなかった。

『ありがとう』

それでも、ナイレンは話してくれたリタに微笑みを向け、情報の対価としていた魔核のペンダントを渡した。すると、彼女はかなり満足そうに、魔核に頬ずりをして喜んだ。

『この魔核探してたのよぉ! ……ところで、なんでここ知ってるの?』

と、その時、彼女は思い出したようにそんなことをナイレンに尋ねた。

『部下のガリスタから聞いた』
『ああ、ああ! あたし、あいつ嫌いなの』
『親しいのか?』
『止めてよ! 前に帝都で会っただけ! 嫌な奴よ!』
『え〜? そうですか?』
『あいつ、あたしが見つけた魔核を武器に転用したのよ!? 帝国って、魔導器を戦う道具にすることばっかり考えてんだもん』

ナイレンが答えると、彼女は心底嫌そうに声を発したのだった。それにシャスティルが言葉を返すと、リタは突っかかるように彼女に言葉を投げ返したのだ。

『ちょっと待って』

そう言ってリタは、ベッドに隣接されているガラクタで埋め尽くされた机の上をかき分け、タイプライターのような機械を引っ張りだした。それを起動させ、並べられた文字をいくつか打つと一枚の紙切れが発行された。

『はい、これ。エアルの影響を受けずに魔導器を動かせる術式』
『エアルの影響を受けずに?』

リタはそれを手に取ると、向き直ってナイレンにそれを渡した。

『というか、過剰な反応しないようにするだけ。長くは持たないわ』

話している間に、その紙切れは透明な札になっていき、プリントされた術式が浮かび上がっていった。ナイレンとシャスティルがその術式を不思議そうに見つめている間も、リタは言葉を続けていた。

『調べるなら急いだ方がいいんじゃない? 魔導器が暴走したら、遺跡どころか街まで巻き込んじゃうかもよ? 魔導器には街を守る力がある。だったらその逆も、あると思わない?』

その物騒な発言に、二人は表情を変えた。

『すまん。礼は改めて』
『フフッ、あたしはこれで十分よ』

立ち上がりながら言うナイレンに、リタは魔核のペンダントを手に、満足そうに返した。

『ところで、こんなところに一人で住んでるのか?』

椅子代わりに使っていた箱を元に戻したシャスティルと共に、ナイレンは建物を出ようとした。その直前、彼はベッドにへにゃりと倒れて目を閉じたリタに問いかけた。

『ここはただの研究所。住まいは別にあるわ。ドア、閉めてってね』

彼女は寝返りを打ちながら、ただそう答えると再び眠りに落ちていった。

だが、彼女の言うドアだったものは、自身が放った魔術のおかげで周囲の壁と共に半分が吹き飛び、もはやその役目を果たしていなかった。ナイレンが一応ドアノブに手をかけ外に出ようとすれば、それごと建物の外側へと、鈍い音を立てて倒れていった。

『あ〜あ……』

それを目にしたシャスティルは、ただ呆れに似た声を発するしかなかった。
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