TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜
□出陣
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***
ナイレンを先頭に、その後ろにユルギスとクレイ、そしてエルヴィンらがついて街の中を歩いていく。
「ユーリ」
そして門の前の広間に出たところで、ナイレンの足が止まった。彼はユーリを呼びながら、別の一人の人物へと視線を向けている。
そこにいたのは、ぬいぐるみを抱えたままこちらを見つめていたエマだった。
「何だよ、どうした? こんな朝っぱらから」
それに気がついたユーリは、優しく笑いかけながら彼女に歩み寄った。そして視線を合わせるようにしゃがむと、頭をなでながら問いかけた。
だが、エマの顔はどこか不安そうにしていた。
「お兄ちゃんたち危ないとこ行くの?」
ぽつりと呟くように出た、エマの不安の正体。それを聞いたユーリは、苦笑するように短く肩をすくめた。
「ったく、どっから聞いたんだ? 大丈夫。兄ちゃん強いの知ってんだろ?」
ユーリは彼女の不安を払ってやろうと笑って言う。だが、それでもエマに笑顔は戻らない。
その時、ユーリは彼女の向こう側にも、同じような表情の人々がいるのに気がついた。
ユーリは立ちあがって、いつの間にか集まっていた街の人々へと一度視線を向けるも、すぐに対処に困ったようにナイレンを呼んだ。
すると、ユーリへと背を向けて立っていたナイレンは溜息と共に肩をすくめ、彼とバトンタッチするように人々の前へと進み出た。
「何だよ、辛気臭ぇ面そろえて。少しの間街をあけるが、結界の外には出ないで待っててくれな。いつもの生活に戻るまで、もうちょっと辛抱してくれ。……行くぞ」
ナイレンを慕い、同時に心配して見送りに出てきた街の人々。そんな彼らに、ナイレンはいつもの調子で笑いかけた。そしてその様子を見守っていたユルギス達を引き連れ、再び歩きだした。
その時、フレンはその広い背中に、一瞬父親の影を重ねてしまった。それを振り払うように、彼もまた、仲間達と共に歩き出す。ただその胸中に、迷いを抱えて。
「あ〜あ、相手の規模もわからんのに無茶しますなぁ」
一方、一行の出陣を街の外から見送る集団がいた。
橋の見える、街からそう離れていない崖の上。そこに、レイヴンとメルゾムらギルドの連中がいた。
「わざわざ忠告してやったってのに、ナイレンの野郎……。まぁ奴らに貸しを作るってのも悪くねぇ」
「……本心で?」
メルゾムは髭の生えた顎へと手を当て、なにやら画策するように呟いた。それをレイヴンは、首だけをくるりと彼へ向けて窺うような口調で聞く。
すると、メルゾムはどこか図星を突かれたように苛立ち、キッと睨むような表情で彼を怒鳴りつけた。
「てめぇはドンに報告するんだろ! とっとと失せろ!」
「へいへ〜い! じゃ、ご無事で」
メルゾムは威嚇するように片足をドンと踏みならし、傍らで片膝をついていたレイヴンはそこから飛び退くようにひとつ下の岩場へと移った。
だがそれでも顔色一つ変えず、レイヴンは飄々とした態度で軽く礼をすると、腕を組みそっぽを向くメルゾムの元から軽い足取りで崖を降り去って行った。
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