TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜
□出陣
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***
ようやく雨のあがった夜の街。ユーリはラピードを連れ出し、先日立ち寄ったパブの近くまで来ていた。
坂をのぼったところにある、街を見下ろせるちょっとした高台。ラピードを塀の上にのせ、ユーリは何をするわけでもなく、ただそこでぼんやりと夜風に当たりながら景色を眺めていた。
と、その時。パブから具合の悪そうな一人の男とウェイトレスが出てきた。
「大丈夫?」
「俺は、死んだあいつの分まで飲むんだ!」
よほど呑んでいたのか、男は店の脇にある壁に身体を向けて吐いていた。ウェイトレスが彼の背を叩きながら心配の声をかけると、男は背を向けたままそう言った。きっと、先のモンスターの襲撃で亡くなった人を弔う宴でも開かれているのだろう。
「飲みなおしだ!」
「もう帰りなさいよ」
吐くだけ吐くと、男はそう言って店へと戻っていた。ウェイトレスが呆れたような声をあげても、お構いなしのようだった。
そのやり取りを終始見ていたユーリ。隣にいるラピードも同様だったが、彼らが店の中へ戻ったのと同時に大きなくしゃみをひとつした。
「帰るか」
そんなラピードをユーリは小さく微笑みながら抱き上げ、そして呟いた。駐屯地へ戻ろうとしたその時、彼はふと空を見上げた。
そこには雲ひとつない、満天の星空が広がり、シゾンタニアを守る結界のリングが浮かんでいた。危険が予想される明日の任務を控えているとは思えない、あまりにも美しい星空。
ユーリはそんな夜空を見上げ、静かに目を閉じた。その胸に、明日への決意を抱きながら。
***
「これより、本部隊は川沿いに進み、湖にある遺跡に入る。目的は遺跡の調査、およびエアルの異常原因の特定と解決にある。帝都からの援軍を待ちたいところだが、事態は急を要する。これ以上エアルの影響をほうっておくと、この街が危険にさらされることになる。街の人は俺達が守る!」
早朝。
ナイレン隊は駐屯地の前で整列していた。その数は、隊長であるナイレンを含めても十四人しかいない。
その中には、先の襲撃で味わった死の恐怖から立ち直ったヒスカとシャスティル、状況を理解しながらもまだ戸惑い続けているフレン、そして今回の任務に最も闘志を燃やすユーリがいた。それぞれが武器を装備し、緊張した面持ちでナイレンの話を聞いていた。
「…ええと……じゃ、行こっか」
彼らは、ナイレンのそんな気の抜けた指示で出発した。
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