TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□フレンの迷い
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『シゾンタニア部隊、フレン・シーフォ。ナイレン・フェドロック隊長の代理として、式典に出席するために参りました』

帝都に赴いたフレン。帝国騎士団団長アレクセイ・ディノイアの前で彼は膝をつき、ナイレンから与えられたもう一つの任務である要請書を渡していた。

『フェドロックはなぜ来ない?』

だがそれを手にするだけで、アレクセイは目を通そうとはしない。フレンは顔をあげ、その理由でもある書類の存在を告げる。

『その中に、援軍要請の書類が入っております』
『此度の式典には、隊長クラスは全員出席と伝えたはずだ!』
『ですが、街の近くの森には、エアルの異常により凶暴化した魔物が多数出現しております。どうか、要請書をご覧ください』

だがおかしなことに、騎士団長閣下とフレンの話は噛み合わない。一方が語るは任務地への増援であり、他方が語るは式典への参列であった。両者の中にある優先順位の違い。より優先されるのは、地位高きものの意見であった。

『式典のリハーサルは?』
『まもなく開始します』
『アレクセイ閣下!』

アレクセイは隣に立つ部下の一人・グラダナへと問う。フレンの、シゾンタニアの、ナイレンの頼みなど歯牙にもかけていない。フレンが懇願するようにその名を叫ぶが、アレクセイは席を立った。

『援軍は式典が終わり次第派遣する。部隊は現場を保持せよ』
『現場は急迫しています! 住民が危険にさらされます!』

アレクセイは身なりを整え、今にも部屋から出ていこうとしていた。それを引き留めるようにフレンは声を上げ続ける。

だが、返された言葉は非情なものだった。

『分をわきまえろ! お前は私の命令を、フェドロックに伝えるだけでよい!』

フレンは彼の言うことに、何も言えなくなってしまった。それをいいことに、アレクセイは足をフレンとは反対に向けた。

『早く戻れ。新米騎士ごときが式に出席しても、なんら意味はない』

彼はその言葉を最後に、フレンに背を向け部屋から姿を消してしまった。フレンはなすすべもなくその場で俯くしかできなかった、その時だった。

『ん? フレン・シーフォ……ファイナス・シーフォの息子か?』

アレクセイにつき従い共に部屋から出ようとした時、グラダナは思い出したようにある人物の名を口にした。それはフレンにとって思わぬことだった。彼は顔をあげ、驚いた顔でグラダナを見つめた。その様子に妙に気を良くしたグラダナは鼻で笑い、膝をついたままのフレンを見下ろしたまま続けた。
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