TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜
□交錯する想い
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「先ほどの話ですが、考え直していただけませんか?」
書庫の奥にあるガリスタの部屋。最低限の明りだけをつけた部屋の中で、ソファに腰掛けるナイレンに向かって、ガリスタはワインを用意しながらそう言った。
「明日には式典も終わります。援軍を待った方が……」
「隊を整えてここに来るのに、何日かかると思ってる?」
「ですが……」
差し出されたワイングラスを手にし、ナイレンは静かにガリスタを諭す。納得がいかないとばかりに表情を曇らせるガリスタに、ナイレンは己の考えを告げた。
「それにな、援軍が来る前に片付けちまいたいんだよ」
「何故です?」
「アレクセイ閣下は魔導器に関心が高いと聞いている。もし遺跡に強力な魔導器があるのなら、壊さずに持ってこいと言いかねん。エアルを異常な状態にし、生き物を凶暴にしちまってる。留守の間に、街の人間、隊員、家畜に被害が出ちまった。俺は、これ以上犠牲者を出したくねぇんだ」
死んでいった人たちの無念を思ったのか、ナイレンの声は悲しそうだった。
アレクセイが見つけた魔導器を扱い、再び同じような犠牲を生むかもしれない。それだけは避けたい。
そんなナイレンの思いを聞いた以上、ガリスタは彼の意思を否定するわけにはいかなくなる。彼はため息をつくように重たい口を静かに開いた。
「わかりました。ルートを検討します」
「すまん。それと、魔導器を持って行くかどうかも迷ってる」
仕方ないというように目を伏せたガリスタ。そんな彼に、ナイレンはもうひとつの悩みを切り出した。ガリスタは静かに、その瞳を正面の彼へと向けた。
「エアルの影響を受けて暴発でもしたら……」
ナイレンが口にしたのは、クレイがその耳で確かに聞いた情報だった。
エアルの発生源と思われる遺跡に乗り込むのだ。エアルの影響を受けないとは思えない。前回の魔物退治でも、魔導器の発動がずれるということが起きていたのだ。ここぞという時に魔導器が発動しないという事故が起きでもすれば……。
隊長として、隊士らに及ぶ可能性のある被害は最小限にとどめる必要がある。そう言うように、ナイレンは口にした。
「しかし、魔術が使えないと、隊の士気にも影響が出ましょう。我々はまだ、魔導器のエネルギーとなる魔核を完全にはコントロールできていません。前回も、発動のタイミングがずれただけでしょう?」
「……わかった。魔導器は持って行こう」
ガリスタの言葉に、ナイレンは静かに頷いた。
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