TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□交錯する想い
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部屋に戻り、フレンは身体中についた泥を洗い落としていた。洗い終わった髪をタオルで拭き、鏡に映る自身の姿をまじまじと見つめる。そこにいるのは、殴り合いで頬を少し腫らしている、父と同じ道を歩む自分自身だ。

そう。本部の判断に、命令にそむいて出動しようとしている、忌まわしいトラウマと同じ道を進もうとしている、自分の姿……。

心に靄を抱えたまま脱衣所を出ると、濡れた床が彼の目に入った。その原因であるユーリを叱ろうと口が開く。

だが、フレンは直前で言葉を呑みこんだ。そんなくだらないことよりも、今は彼に言わなければならないことがあった。

「さっきはごめん。ランバートが死んだと知らなくて」
「いや、俺も。まさか援軍断られたなんて……」

ベッドに身体を預けていたユーリにフレンは、そしてユーリもフレンに、素直に自分の非を謝った。フレンは自分のベッドの端に腰をかけ、重たい空気の中、静かに切り出した。

「父の遺体は戻ってこなかった。少ない遺品を返されただけだ。死んでしまったら終わりだ。何も残らない。だから明日の出動には、納得していない」
「すぐ近くの森まで魔物が来てる。街の中に入ってきたらどうすんだ?」
「結界があるんだ。そんな簡単に入れるはずがない」
「俺は隊長についていく」
「この隊だけでは無理だと判断したから、援軍を頼んだんだろ? 待つべきだ!」
「その間にまた被害者が出る。もうイヤなんだよ! 誰かが死ぬのは……!」
「僕達だって死んだら終わりだ!」

結界がある限り、シゾンタニアに魔物が入ってくることはないかもしれない。だがそうして援軍を待つ間に、新たな犠牲者が出るという可能性は捨てきれない。もう誰も失いたくはない。だが、自分達が死んでしまえば、何も解決することなどできない。

両者の考えは決して交わることはなく、どこまでも平行線だった。

「……ラピードのとこ行ってくる」

終わりの見えない口論に無理やり終止符を打つように、ユーリはベッドの傍らに脱ぎっぱなしにしていた靴をはき、部屋から出ていった。フレンはそれに口をはさむことをせず、目で追うこともせず、黙ってユーリを部屋から送り出した。
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