TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□騎士とギルド
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「やぁだ、ギルドがいるわ」
「タイミング悪ぅ」

軽装に着替え、ユーリら四人とラピードは先ほどのパブを訪れていた。扉を開くと同時に、酒に酔った男達の豪快な笑い声がドッと押し寄せてくる。

パブ独特の空気に歓迎され、しかし双子はそこにいる集団に覚えがあるのか、途端に小さな声で嫌そうに呟いた。

「なんだよ、“ギルド”って?」

ユーリは不思議そうな顔で二人に尋ねる。そんな彼に顔を向けながら、ヒスカが口を開いた。

「帝都の下街にもいたでしょ? 自警団気取りで、金儲け主義の連中よ」
「“ユニオン”って組織母体があるのよ。“ドン・ホワイトホース”ってのが、ボスの名前。とにかく柄が悪いの」
「ふ〜ん」

続いてシャスティルが補足すると、ユーリは口端を上げて店の中へと歩いて行った。その瞳にはどこか獲物を見つめるような鋭さがあり、気づいた彼女らは途端に胸騒ぎを覚えた。慌ててお目付け役のヒスカが彼の後を追って、一緒に店の奥へと入っていく。

「でな、森を抜けて向こうの街まで行きてぇ、って言うからよ、とりあえず前金で全部よこしな、つったんだよ」

その先には、ギルドの一員であろうスキンヘッドの男が、酒を手に同じテーブルについている二人にそう話して聞かせているのが見えた。

ユーリはなるべく彼らに近い席に座り、ヒスカもユーリの正面席に腰を下ろす。その間、ユーリの目は相変わらずギルドの連中に向いており、今にも彼が喧嘩を売るのではないかと、ヒスカは気が気でないようだった。「やめてよね」と小声で釘をさすが、それがユーリの耳に入ったかどうかは定かではない。

ユーリは水を運んできたウェイトレスに注文を頼むと、再びギルドの男たちの会話に耳をそばだてた。

「んで、面倒臭くなってよ。森を抜けたところで、その爺さん置いてきちまったよ」
「いけねぇな。きちんと街まで護衛しねぇとな」

スキンヘッドがそう話すと、同席している青髭の男が説教じみた言葉をかけていた。しかし、その口調もどこかずれており、反省を促すようなものではない。その上、三人共大声で笑い出す始末だった。

酒のせいかもしれないが、常人であれば、その話に嫌悪や呆れを抱くものであろう。

「いい加減な仕事で金巻き上げて飲んだくれるたあ、良い身分だなぁ」

もちろん、ユーリは嫌悪感を抱いた側だった。

彼らに聞こえるよう、わざと大きな声で言い、注目を集める。男達は笑うのを止め、ユーリを睨みつけた。彼は気にせずに涼しげな表情でグラスの水を飲んでいるが、ヒスカは対照的に手を額に当て、なんで挑発するのよ!? とでも言いたそうに重いため息をついている。

そんな彼女の隣の席に、わざと音をたてて男が腰をおろしてきた。その後ろには同席していた他の男たちもおり、彼らの眼は完全にユーリに向いている。ヒスカは巻き込まれまいと、自分のコップを持ってこそこそと席を離れて行くが、それを気に留める者は誰もいない。スキンヘッドの男は身を乗り出すようにして彼にガンつけてきた。
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