TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜
□守るべき命、討つべき命
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「やめろ、ランバート…ランバート……」
クレイやユルギスらが、尚も彼らに襲いかかろうとするクリーチャー・ランバートと対峙している間、ユーリは呆然とその様子を見ていた。その心には、まだ戸惑いと迷いが行き交っている。
だが、迷い続けているユーリの前で、ランバートは仲間を蹴散らしていった。武器を盾代わりにして攻撃を防ぎながらも、エルヴィンとユルギスが地面を転げる。ヒスカはまだ怯えているようで、腕の魔導器をランバートに向けながらも、じりじりと後退している。そんな彼女を守ろうと、クレイがランバートに斬りかかっていった。
だが、一緒に取り込まれた他の軍用犬の頭に邪魔をされてしまい、クレイの手から剣がはじき出されてしまった。ユルギスとメルゾムの叫び声が聞こえるのとほぼ同時に、クリーチャー・ランバートはクレイ目掛けて血に濡れた牙で襲い掛かった。
「ランバーーートっ!!」
その牙がクレイに届く寸前、ユーリの声が響き渡った。ランバートはピタッと動きを止め、声のするほうへ頭を向けた。歯を食いしばり、剣と悔しそうな瞳をまっすぐ向けるユーリが映る。
そんなユーリを最優先対象と認識したのだろうか、クリーチャー・ランバートはそのまま彼へと向かっていった。そしてほぼ同時に、ユーリもランバートへと駆け出していく。
(ランバート……ごめん!!)
口に出さない謝罪の言葉。ユーリは力強く踏み込み、かつての仲間へ剣を振り上げた。緩やかになった時の中で、メルゾムやクレイ、ユルギスらが、両者を大きな瞳で見ている。
やがて、ユーリの剣が敵を切り裂き、ランバートの断末魔の叫びが森中に響いた。
***
その夜。隊舎へ戻るユーリの心を映したように、いつもよりもいっそう暗闇が街を支配していた。隊舎の門を開けるために立ち止まると、ユーリはふと、手にしていた抜き身のままの剣を目の前まで持ち上げた。
刃独特の光を放つ彼の剣。だが、今のユーリの目に映るものは、それだけではない。
「くそっ!!」
手に篭る力は増して、剣は地面へと投げ捨てられた。奥歯を鳴らし、ただその場に立ち尽くす。
目に焼きついただけでなく、耳にも残っている。変わり果てた仲間。その仲間が起こした惨劇。
そして、その仲間をこの手で殺した、あの感覚と光景。耳を劈くほどの悲鳴……。
――けど、あれしか手がなかったんだ。どうしようもなかったんだ!
そう言い聞かせてみるものの、納得などできはしなかった。
ユルギスらはユーリを責めたりしなかった。彼が考えるように、あれしか方法がなかったと考えているからだ。ただ一人、クレイだけが彼らと違う瞳を向けていたが、それでも何も言わなかった。
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