TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□黄昏に流れ来る暗雲
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フレンが帝都へ、ナイレンとシャスティルが魔導士リタ・モルディオの元に出かけて、二日が経った。

シゾンタニアの街に残った隊士達は、今日もそれぞれの職務へ、または空いた時間を有意義に過ごしていた。そんな昼下がりの宿舎の中庭では、木陰でランバートとラピードが昼寝をしていた。その近くで聞こえる木刀同士がぶつかり合う音。そのうちの一本が宙へ投げ出され、相手方の木刀がもう一方の首筋横を捕らえた。

直後、ユーリはつまらなさそうな表情でヒスカを見た。

「なあ、訓練より森の魔物を一匹でも倒すほうがよっぽどいいんじゃねぇのか?」

カランと音を立て、ヒスカの木刀が地面に落ちる。そのタイミングで、ユーリは手にしている木刀を一回転させて肩に担ぎながら、これまたつまらなさそうに口にした。

「だから、それは帝都の援軍が来てからでしょ?」

そんな彼に手を焼くヒスカ。いろんな意味でシャスティルと変わりたい、彼女はきっとそう思っているだろう。後輩を叱る以外に、彼女の口から出てくるのはため息ばかりだった。

そんな和んだ空気は、一瞬のうちにして消え去った。

宿舎を慌てて駆ける足音。それに気づいた時、ランバートはすでに顔を上げて音のするほうへ顔を向けていた。そして足音が近づいてきたかと思うと、ばん、と勢いよく中庭への戸が開けられ、隊員の一人がただごとならぬ表情を浮かべて現れた。

「どうかしたの?」
「魔物が攻めてきた! それも、街のすぐそばまでだ!」

ヒスカが尋ねたのと、その隊員が叫んだのはほぼ同時だった。

整い切れていない息のまま、彼は一気に緊急事態を二人に告げる。ユーリとヒスカは顔を見合せ、急いでその隊員の後に続いて中庭を出た。その後ろから、ラピードに大人しくしているよう言いつけたランバートが走ってくる。彼らはそのまま弾丸のように駐屯地を飛び出し、街の門まで一気に駆け抜けた。

そして橋の上まで来た時、彼らの目に映ったのは、今までに相手してきたような獣ではなかった。エアルを取り込んでいるのか、毒々しい赤色をした触手のようなクリーチャーが、街にも手を出そうとこちらに伸びてくる。

しかし、街を守る結界がそれを阻み、ユーリ達の目の前で音を立てて弾き返されていた。

「あんなの見たことねぇぞ!」
「街は結界が守ってくれる。早く!」

二人は驚きながらも、一刻も早く橋の向こう側まで駆け抜けていった。

「街まで走れ!」

そこでは馬車が襲われ、先に着いていたユルギス達が人々を避難させながら応戦していた。

現場の指揮を執り、馬車から女性を助けだしていたユルギスの目の前で、クリーチャーが馬車を掻っ攫っていく。荷車に繋がれたままだった馬は悲鳴をあげ、馬車はそのまま地層の壁に叩きつけられた。尚も襲いかかってくる魔物たちに、騎士たちは剣や魔導器を向け、人々を街へ退避させることに必死だった。
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