TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□少年の因縁
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ヒスカらに引っ張られながら駐屯地に戻ったユーリ。宿舎に入ると、クレイはナイレンへ報告しに姿を消し、双子は先ほどの乱闘で負った傷の手当てをするために少年らをロビーのソファへと連れて行った。

「なんだよ! むこう治癒術使ってんじゃん! 差別すんなよ!」
「うっせ!」

喚いているのは喧嘩を売りつけた張本人ユーリ少年。ローテーブルをはさんだ向かいでは、フレンがシャスティルから治癒術による手当を受けている。対する彼は全手動。ヒスカは文句をたれるユーリを睨みつけ、足に負った大きな傷口に消毒スプレーを勢いよく吹き付けた。傷口は沁み、もちろんユーリからは盛大な悲鳴が上がった。

「痛かったら反省しなさい」

ヒスカは悪びれもせずに乱暴な手当てを続ける。その姿は、日頃の生意気な後輩に対するうっぷんを晴らしているようにも見える。

だが、当然ユーリはそんなヒスカに黙ってはおらず、すかさず文句を吐き、ヒスカもそれに負けないくらい口答えする後輩に反省の態度を求めて口論を始めるのだった。

「フレンには少しは同情するわ。途中までだけどね」
「はぁ……」

その隣で行われる丁寧な治療。特別シャスティルの手当てが上手いわけではない。単にフレンの日々の行いが良いだけである。

「ね、あんた頭にも怪我してんじゃん。見せてみ」

その時、シャスティルは彼の頭にできている怪我を見つけ、彼の頭を上から抑え込む形でその手当てを始めた。

しかし、その体勢は図らずもフレンの目の前にその豊かな胸をさらすことになったわけで。顔を赤くするフレンはなんとか離れようともがいてみるが、おそらく彼女はそんなことに気づいていないのだろう、「うごかない!」と言いながら、より彼を引き寄せ、固定する形で治療を続けていた。

「だいたい、なんであんたみたいなのが騎士団に入ったのよ?」

その一方で、ヒスカはユーリへの手荒い治療を終えたようだ。救急セットを片しながら、そうユーリに尋ねていた。

「別に。他にやることもねぇし、給料だけはいいし。それに俺、強いもん」

その問いに、ユーリは消毒液を吹きつけられた左足を抱えた態勢のまま答えた。特に最後の一言は得意げに口にしていて、ヒスカはその様子にまた呆れた顔になった。昨日の任務で、確かに彼が少しは強いことはわかるが、それを自分の口から言ってしまっては台無しだ。

「つまりは、たいした目的もなくふらふらしてて、力を持て余してたってことです」
「うるせ!」
「昔のまま、何も成長してません!」
「お前もな! 陰険な性格そのまんまじゃん!」

そんなユーリに向けられた棘のある言葉。テーブルを挟んで正面から向き合い、シャスティルから解放されたフレンはユーリを指差しながら、ユーリは左足を抱えたままいがみ始めた。
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