TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□軍師
2ページ/3ページ

だが、そんな彼らに、ガリスタはひとつの伝書を手渡した。

「帝都から命令書が来ています。三日後の人魔戦争終結十周年の式典に参列せよ、と」
「……俺たちの仕事は、かしこまって整列することじゃねぇだろ」

ガリスタの手から渡ったそれを、呆れた目で見つめながらナイレンはぼやいた。せっかくのやる気も、その命令書一つで削がれてしまったようだった。そんな彼に、ガリスタは苦笑を携えて答えた。

「本部にそう言えれば、苦労はしません。参加するのでしたら、すぐにでも出発しないと」

式典は三日後。このシゾンタニアから帝都までは、およそ三日かかる。彼の言うとおり、今日明日中にでも発たねばならない。

「あのさ、誰かエアルや魔導器に詳しいやつ知らねぇか?」

だが、彼の意見は果たして耳に入っているのやら。ナイレンはキセルをくわえたままガリスタに向きなおると、そう尋ねた。

「……確か、リタ・モルディオという魔導器研究家の施設が近くにありますが?」
「場所教えてくれ」

ガリスタは言われるまま彼の問いに答えた。だが次に出たナイレンの言葉に、クレイとガリスタは目を丸くした。

「行かれるのですか? 式典は?」
「代理を送る」

ナイレンはきっぱり言い、席を立った。そのあとを追うように慌ててクレイが立ち上がり、彼の肩を強く叩いた。そして首を傾げながら振り返るナイレンに、クレイは自身の胸に手を当て、何かを伝えようと強い瞳で彼を見つめた。

すると、ナイレンはそんなクレイの頭をポンと軽く撫でた。

「“自分がいるから行け”ってか? それとも、“自分が代理で行ってくる”か? どっちにしても、お前一人じゃ無理だろう。それに、戦争終結の式典なんて出ても、お前には辛いだけだ」
「……」

言葉を発せないクレイは、ナイレンやユルギスといった親しい仲の人間がいなければ、簡単に他人と意思疎通はできない。それに、人魔戦争で家族を失ったクレイにとって、式典は苦い思い出を噛み締める場でしかないだろう。

ナイレンの言葉に何の反論もできず、クレイは俯いてしまう。

しかし、ガリスタはナイレンの式典欠席をまだ納得しきれてないのだろう。ナイレンに訴えるように、彼ら同様席を立った。

「ですが、アレクセイ閣下は……」
「こっちのほうが重要だ。そう判断する」

だが、ナイレンはガリスタの言葉を切り捨てた。瞳には強い意志が宿っており、もう何を言っても考えは変わらないだろう。

それを悟ったのか、ガリスタは大きくひとつ溜息を吐いた。

「わかりました。ですが、ひとつ問題が」
「ん?」
「モルディオは少々気難しい性格でして、手土産のひとつでもあったほうが……」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ