TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□軍師
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駐屯地の書庫は、大きな窓から差す日の光でやさしい明るさに満ちていた。白い壁に囲まれ、木造りの本棚には書物がぎっしりと詰められている。その静かな空間の奥で、長い金髪の男は机に向かい、静かに筆を走らせていた。

「ガリスタぁ!」

その静寂を破るように大きな音をたてて扉をあけ、大きな声で軍師の名を呼んだのはナイレンだ。続いて書庫に足を踏みいれるのは、そんな隊長に呆れた眼差しを向ける隊長補佐のクレイ。書庫の奥にいたその男――ガリスタ・ルオドーは静かに席を立ち、彼らの前に姿を見せた。

「フェドロック隊長。それに、クレイ隊長補佐も」
「おう! ガリスタ!」
「書庫ではお静かにお願いしますよ」
「ちと、お前の考えを聞きてぇ」

ナイレンの相変わらずの声量に、普段は整ったガリスタの表情も呆れたものになりつつあった。ナイレンはそんなことなど気にした様子もなく、彼の肩に手を置き、そのまま奥のスペースへと連れて行こうとする。ガリスタは少し困った目をクレイへと向けるが、クレイも「どうにもできない」というように、肩をすくめるばかりだった。





「例の森の魔物は、大半退治できたようですね」
「お前の作戦のおかげだ」

ローテーブルを挟み、ナイレンとクレイ、そして反対側にガリスタがソファに腰掛け、会話を切りだした。ガリスタが入れた紅茶を口にしながら、ナイレンも昨日の出来事を話して聞かせた。

「でな、あの森エアルが異常な量を発生してたぞ。動物も植物もえらいことになってる」
「急激に魔物が増えたのは、エアルの影響で? 時期はずれの紅葉も、ですか?」

ガリスタは眉をひそめ、クレイがこくりと頷く。ナイレンはカップを手にしたまま言葉を続けた。

「作戦に使った魔導器も発動がずれやがった」
「魔導器が影響を受けるほど、エアルが噴出しているということですか」
「そっちを止めねぇと、いくら魔物を退治しても意味がねぇ」
「どこからきてるんでしょうね?」

視線をわずかに天井に向けながら、ガリスタは考える。それに対し、ナイレンはあることを思い出した。

「川の上流の湖の中に遺跡があんだろ。紅葉は川沿いに進んでるんだから、あそこに何かあんのかな?」
「エアルの噴出を促す何かが、ということですね。……例えば、何かの魔導器とか」

彼の言葉に、ガリスタは更にそう推測を加えた。その発言に眉をひそめるナイレンとクレイ。

しかし、ガリスタ自身がすぐにその説を否定した。

「ですが、あの場所は打ち捨てられていて、何もないはずです」
「すぐに調査しねぇとな」

火のないところで煙が上がるはずはない。ナイレンはクレイと顔を見合わせ、頷いた。
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