TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜
□エアルと魔導器と
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「ああ、隊長さん。これ持ってって」
その時だった。
街の中に戻ったユーリとフレンを、見慣れない光景が待ち受けていた。
「森で狩りができないから、たいした物ないけどね」
「すまんな。なるべく早く森へ行けるようにすっから」
先に街に戻ったナイレンに声をかけ、一つの包みを手渡す男がいた。彼はシゾンタニアの住民の一人で、ナイレンは彼に対して笑顔で受け答えし、まるで友人に話しかけるようにそう言った。
「クレイとガリスタんところ行って来る。あと頼んだぞ」
そのナイレンはくるりとこちらを向き、ボーっと立っているユーリとフレンに大きな声で言った。突然声をかけられたことに戸惑いながらも、彼らは返事をした。
「あ、はい……」
「ああ、隊長! ラピード連れてってくれよ。邪魔なんだよ」
そう言うユーリの足元では、まだあの子犬が尻尾を振って彼を見上げていた。
すると、ナイレンは彼の隣を歩くランバートに声をかけ、ラピードを連れてくるよう指示を出した。ランバートは指示通り、自分の息子の首根っこを咥え、彼のもとへと戻ってくる。そして、ナイレンより先を行き、隊舎へと歩いて行った。
それを確認すると、ナイレンは先ほどの男に別れのあいさつを述べ、クレイと共に歩きだした。
「隊長! 頼まれてたやつ出来たよ!」
「おう! 投げてくれ」
そうしてしばらく歩かないうちに、一軒の家のベランダから女性が顔を出し、気兼ねしない様子で声をかけてきた。彼女もまた、古い友人のようにナイレンと短いやり取りをかわしている。
「仲良くやってんな。帝都にいる騎士団じゃ考えられねぇ」
その様子を目にし、ユーリは間抜けな顔でぽつりと呟いた。
帝都の下街で育った彼は、そこに現れる騎士団が今のように住民と接している風景など見た記憶がなかったのだ。
呆けるユーリに、先ほどナイレンに声をかけた男性は笑って言った。
「小さい街だからね。協力しないとやってけんのさ。ま、あの人が騎士団の隊長っぽくないってのがあるんだけどね」
彼はそう言って、小さくなるナイレンの背を眺めた。
騎士団の隊長っぽくない。
その発言に、確かに、とユーリは微笑んで納得した。言葉づかいも態度も、騎士団のような改まった雰囲気はどこにもない。あるとすれば、身につけている武具くらいだろうか。
そんなナイレンに呆れを感じることも時々あるが、頼りになる上司であることに変わりはなかった。
しかし、そんなことを思うユーリとは対照的に、フレンはそのいい加減さについていけないと思うのだろう。
「“早く森へ行けるように”なんて、安請け合いしすぎです!」
彼は苛立った口調で吐き捨て、シャスティルと共に巡回に消えていった。
その様子に驚いたユーリと男は、互いに目を合わせ、肩をすくめて苦笑するしかなかった。
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