TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□エアルと魔導器と
2ページ/3ページ

「ヒスカ、落ち着いて――」
「わかった! 見せてあげようじゃないの! あたしらを馬鹿にしたこと、後悔させてあげるわ!」

シャスティルが苦笑気味に声をかけたのと、ヒスカがユーリに啖呵を切ったのはほぼ同時のことだった。

握られていた右手の人差し指を生意気な後輩に向け、そしてズンズンと城門の外へ歩いていった。ユーリはヒスカの剣幕に一瞬たじろいだものの、すぐさま「やりぃ!」という表情で指を鳴らし、彼女のあとに続いた。

「ヒスカ。それじゃ、ユーリの思うツボだって……」

そんな二人の背を見つめ、シャスティルは大きなため息をついた。そんな先輩を、フレンはどうフォローしたらいいか思いつかず、ただ肩をすくめている。クレイも髪を掻き、彼らと一緒に城門の外へと足を運んだ。

すると、すでにヒスカは武醒魔導器を構え、魔術発射の体勢を整えていた。

そして彼女の右腕に装着されている魔導器の魔核から発射された、ひとつの魔術。それは空へゆるゆると上っていき、失敗に終わった花火のように弾けて消えた。

「しょぼっ! レベル低っ!」
「あたしらは回復と防御系が得意なの!」

もちろん、そんな魔術を見せられたユーリは別の意味で驚愕の声をあげた。

もともと攻撃魔術が専門ではないとはいえ、あんな不発弾もどきを見せられては開いた口が塞がらないというもの。

「シャスティル!」

――このまま引き下がれない!

呆れ返るユーリに先輩騎士としてのプライドがそう思わせたのか、ヒスカは荒い口調でシャスティルを呼んだ。シャスティルはヒスカの意図を理解したのか、彼女のそばに立ち、魔導器の魔核に手を添えた。

すると、先ほどのように魔導器は魔術発射の術式をくみ上げ始めたのだが、そこにはヒスカだけではなく、シャスティルの力も加わっていく。

「魔導器は、こういう使い方もできるのよ」

ヒスカがそう言った直後、彼女らが組み上げた魔術は空へと発射された。

今度のは、先ほどとは別格の火炎弾だった。弾丸の如く勢いよく空へ飛び出し、彼方へと向かう途中で花火のように弾け散った。

これにはユーリも称賛に値すると思ったらしく、手を叩いて感心していた。

「何やってんだ。危ねぇな」

その時、低い呆れた声が彼らの正面から飛んできた。

街の外へと続く橋。その上をランバートと共に歩いてこちらに向かってくる人物に目が止まり、ヒスカは思わず声を裏返した。

「隊長! ……どうしたんですか?」
「森の様子見てきた。ったく、クレイも何一緒になって見物してんだ。固まってないで巡回行って来い!」
「はい……」

ナイレンの一喝で、ヒスカたちはしょぼんと頭を垂れた。

が、すぐに気を取り直し、ナイレンとアイコンタクトを取りながら踵を返したクレイのあとに続き、彼女たちも二人の後輩を引き連れ街の中へ戻って行った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ