TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜
□騒がしい日常
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「ユーリ!!」
「なんだよ」
顔いっぱいに怒りを浮かべながら大声をあげるのは、金髪の新人騎士フレン・シーフォ。同じく新人騎士であるユーリ・ローウェルは、大股で歩み寄ってくる彼に、突っかかるような口調で言葉を返す。その態度に、フレンは更に声を荒げた。
「何で作戦通りに行動しない!?」
「うまくいったんだからいいじゃねぇか」
「勝手な行動で失敗したら、皆が巻き添えをくうんだぞ!!」
「いちいちうるせえな! 細かいんだよ、お前は」
「いい加減なんだよ、ユーリは!!」
反省の態度を一向に見せないユーリ。そんな彼に対するフレンの怒りは募るばかりだ。互いににらみ合い、そのまま喧嘩に発展しそうな空気が漂い出す。
「ええい、うるさいうるさい!」
だが、その空気は一人の人物が割り込んだことで途絶えた。
二人が所属する部隊の隊長ナイレン・フェドロック。彼はその大きな手で作った拳骨を、同時に両者の頭へ食らわせた。おかげで少年らは殴られた箇所に手を当て、痛みで小さく呻き声をあげている。
「とっとと後片付けに行って来い!」
ナイレンの一喝に、二人は渋々といった様子で立ち去っていった。
だが、
「おまえのせいで殴られたじゃねえか」
「もともとユーリのせいだろ」
「うるさい!!」
また口喧嘩を始める二人に、今度は双子の先輩騎士シャスティル・アイヒープとヒスカ・アイヒープから同時に怒号が飛んだ。騒々しい彼らが去って行くと、ナイレンは小さくため息を吐き、愛用のキセルに魔導器を使って火をつけ、一服した。
「隊長」
その時、副隊長のユルギスが彼を呼んだ。ナイレンがユルギスに目を向けると、彼はある方向を指差していた。
その先には、一点を見つめて唸り声を上げ続けている軍用犬と、その横に跪き、同じ方角をじっと見る一人の騎士がいた。ナイレンとユルギスは彼らの元に歩み寄り、ナイレンは軍用犬を挟んで、その騎士と反対側に膝をついた。
「ランバート、クレイ……」
ナイレンは鎧に覆われた軍用犬――ランバートの背に優しく手を置き、彼と同じ方向を見据えた。すると隣に居た騎士はナイレンを一瞥し、入れ替わるようにして立ち上がった。
山吹色の短髪に、顔の左半分を隠している前髪が特徴の隊長補佐役クレイ。そのスッキリとした藍色の瞳には、空気中に漂う赤い粒子のようなものが映っていた。
「ずいぶんと、紅葉が街に近づいてますね」
「うむ……」
ユルギスの言葉に頷きながら、ナイレンは地面に落ちている葉を一枚手に取った。
今のこの時期、木々はまだ青々とした葉をつけているはずだった。しかし、この葉はすっかり紅葉しきって枯れていた。季節はずれにも程がある。
ナイレンはその場から立ち上がると、ユルギスら同様、紅葉に溢れる景色と漂う赤い粒子を睨みつけた。
「エアル……」
やがて、ナイレンはほとんど誰にも聞こえない呟きを溢すと、くるりと踵を返した。そして「行くぞ」と短い指示を出し、ユルギスらを連れて撤収作業へと戻っていった。
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