TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜

□おまけ
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(ちょっと表に出ろ。そして説明してもらおうじゃないの)
「クレイ、落ち着けって! 隊長、止めて下さいよぉ!」

何が気に入らなかったのか、複雑な乙女心を瞬時に理解する術を、ユルギスはあいにく持っていない。

そして愉快そうに笑って手を振るナイレンに見送られながら、彼はクレイに店の外へと連れ出されていった。

「相変わらずだな。クレイの嬢ちゃんはよう」

そして一人残ったナイレンのもとへ、豪快な笑い声をあげながら近づく男がいた。シゾンタニアのギルドを仕切るメルゾムだ。彼はついさっきまでクレイが座っていた席につくと、頬杖をついて店の出入り口へと視線を向けた。

「まったく。どうしてあんなに色気なく育っちまったかねぇ」
「ははは! 育てた本人が言うかねえ」

わざとらしくため息を吐くナイレンに、メルゾムは笑って言った。

すると、ナイレンは新しいワインが注がれたグラスを見つめ、そして独り言のように口を開いた。

「……俺はよう、あいつには幸せに生きて欲しいんだ。俺に恩を感じたからかどうかは知らんが、騎士になって、わざわざ危険と隣り合わせな生き方を選んで……」
「ナイレン……」
「あいつの両親に怒られちまうかな? 娘にこんな危険な道を歩かせるなんて」

そう言って、ナイレンは何もない天井に視線を向けた。メルゾムはそんなナイレンを一瞥し、自分のグラスに入った酒をあおった。

そしてひとつ息を吐き、静かに口を開いた。

「けど、それはクレイ自身が選んだ道だ。誰も否定なんかできねぇよ」
「まぁ、そうなんだがな……」
「どうした?」
「……あいつの花嫁姿、見てみたいんだよ。父親として」

感慨深げに口にしたナイレン。そんな彼の発言に、メルゾムは愉快そうに笑い声をあげた。

クレイがあの調子では、当分ナイレンの希望は叶いそうにない。

一瞬困ったように顔をしかめたナイレンの様子から、ハードルの高さがうかがえる。

「さっさとしてもらわねぇと、俺も年だからな」
「ははっ。安心しろ。おめぇが先に逝っちまった時は、俺が代わりに見届けてやるよ」
「フッ。そうさせねぇよう、長生きしなくちゃな」

そう言って互いににやりとした笑みを浮かべ、直後、吹き出したように笑い声をあげ、酒を口にした。


***



「ユルギス、どうしたの? その顔」
「ボロボロじゃない」
「……ほっといてくれ」

翌日。

顔中を腫らして現れたユルギスに、シャスティルとヒスカが驚いたのは別の話。



END
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