TOV The First Strike 〜重なる3本目の道〜
□エアルと魔導器と
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先に街とその外を隔てる城門に辿りついたクレイは、すでにクリス隊員と引き継ぎ作業を済ませていた。
そこへ遅れて現れた、先ほどと違って覇気のなくなった四人。事情を知らないクレイだが、なんとなく察しがついたのだろう、短いため息を吐いた後、ユーリらにとって予想外の行動に出た。
「ん? なんだよ…って、おわっ!?」
トントンと軽く肩をたたかれ、ユーリはその方向へ顔を向けた。
すると、彼の目の前に青い影が至近距離で現れ、驚いて思わず半歩飛び退いた。それを見てクレイはくくっと笑い、その腕の中にいた青い影――ランバートの息子である子犬ラピードはゆっくりと地面に下ろされた。ラピードはそのままユーリの足元を駆け回り、時折彼の足にすり寄った。
「てめっ、クレイ! よくも…って、邪魔だな、こいつ」
「ラピードの世話係なんだからいいじゃん」
ユーリはクレイに食ってかかろうとするが、足元のラピードが気になって気を逸らされてしまう。それに対して突っ込むのは、やはり彼の教育係のヒスカだった。それに加わり、フレンとシャスティルも、うんうんと頷いている。
一人不平を口にするユーリだが、それをまともに相手するのは、四人と一匹中誰もいない。ユーリは諦めるように、はあ、と短くため息をついた。
だが直後、ふと何かを思いついたように顔を上げた。
「な、魔術見せてくれよ」
「はあ? 今、必要ないでしょ?」
「昨日、ひっくり返ってて見えなかったんだよ。新米じゃ、まだ支給してくんねぇし」
「あんたは一生無理かもよ」
ユーリはまるで新しい玩具をせがむようにヒスカに言うが、それは軽くあしらわれるだけだった。ヒスカはまるで相手にしない。
その隣で、シャスティルはその様子を見ながらフレンに目を向けた。
「フレンはコネ使えば早いかもよ。お父様も騎士だったんでしょ?」
「実力で手に入れますよ」
そう言って少し不機嫌になるフレン。シャスティルは真面目な彼らしいと思い、クスッと笑い声をあげた。
「勉強のために見せてくれよ」
その一方で、ユーリはまだヒスカに頼みこんでいた。
とは言ったものの、別に畏まる訳でもない、頭を下げているわけでもない、友達に軽い気持ちでも物事を頼むような態度で、だ。これでヒスカが頷くわけがない。
「まず、その口の利き方直しなさいよ」
当然、彼女はそう言って注意した。
すると、ユーリはすぐさまその場で気を付けの姿勢をし、ヒスカに向かって真っ直ぐ立った。
やればできるじゃん、とヒスカが感心した、次の瞬間だった。
「見・せ・て・く・れ・よ!」
「馬鹿にしてんの!?」
すかさず入るヒスカの突っ込み。苛立ちが募る彼女の右手には自然と力が入り、胸の前で怒りに震えていた。
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