TOW RADIANT MYTHOLOGY +α

□No. 3
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「イネス! 果物の調達、終わったよ!」
「あら、ご苦労さま」
「おーい、シエルグ! ちょっといいか?」
「うん!」

すっかりアドリビトムに慣れたシエルグは、その素直で明るい人柄と真面目な働きぶりから、仲間たちの人気者になっていた。依頼の合間に誘えば、嫌な顔ひとつせずに彼らに付き合ってくれる。シエルグが心から楽しそうにしているのを見て、カノンノも自分のことのように嬉しそうだ。だが一方で、彼が無理をしていないかと心配もするようになった。

「ロイド。鍛錬の相手なら、少し休憩してからにしてくれない? 魔物と戦って、疲れてるはずだから」
「カノンノ。僕なら平気だよ?」
「だーめ! それで突然倒れたりしたら大変でしょう?」

そのため、自然と口をついて出るのは彼を心配する小言ばかり。アドリビトムの仲間たちは、それを鬱陶しく思うどころか、むしろ微笑ましげに見守っていた。

「なんだか、カノンノとシエルグってきょうだいみたいだね」
「ええ。さしずめ、カノンノがシエルグのお姉さんってところでしょうか」
「見た目的には逆だけどね」

ジーニアスとフィリアの会話に、イネスも楽しそうに頷いた。

「それに、カノンノがユゥニア以外にあんなに懐くなんて、初めて見たわ」

いい兆候だ、とイネスはシエルグらを見ていた。



アドリビトムに寄せられる依頼は、受注受付を担当するイネスによって管理されている。それらは常にホールに掲示されており、メンバーが各々気の向いた時に眺めては受けていくこともあれば、イネスが適正を判断したメンバーに頼むことで成されることもあった。

カノンノ達と初めて依頼を達成した日以来、シエルグは毎日のように依頼書を見にやって来ていた。そして自分にできそうなものを見つけると、配達や討伐、探しものまで、なんでも選んでは元気に船を出て行くのだ。

「シエルグ。今日も依頼を見に来たの?」
「うん」
「なら、ちょうど良かった。誰かに頼みたい仕事があったの。受けてもらえないかしら?」
「いいよ」

イネスが頼むと、シエルグは嫌な顔ひとつせずに頷く。そんな彼に「ありがとう」と礼を述べると、彼女は早速一枚の依頼書を手にとった。

「依頼の内容は、物資を届けることよ」

そしてそれをシエルグへと渡す。

「送り先は、ヘルテミー国のボナンズ村――ユノス森林を抜けた先よ。同行者はカイウスと、現地でもう一人合流するから、三人でよろしくね」
「わかった!」

イネスの説明を聞き終えると、シエルグは笑顔で答え、準備を整えに部屋へと走っていった。
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