short

□彼女の面影
2ページ/2ページ





「何言ってるんですかシオン様。
今更変に仮面をつけたら逆に目立ちます。」

「ずっと女の恰好をしておれば良いだろう?
私闘を禁ず聖闘士にとっていろいろ便利だぞ。」

「仮面ってね、私は免罪符だと思わないんです。
アテナ様もそのつもりで仮面の掟を作ったのではないと思いますよ。」

「……では音夢の見解は?」

「仮面の掟はね、好きな人の前では女の子でいても良いっていうお許しなの。
大好きな人となら女でいるのを女神も歓迎するの!
だって世界は愛で溢れているのだから。」

「――――っ」



そうだ、思い出した。

かつて彼女もそう言ったのだ。

“大好きな人の前でなら女の子でいても良いのよ”

そう言って笑った彼女に、私は恋に落ちたのだ。



「シオン!?」

「え、ちょっ、シオン様??」

「お前だったのだな…」



もし平和な時代に生きていたら、会いに行ってあげるわ。

そう言って戦場に赴いた彼女は帰ることはなかった。


抱き寄せた音夢が彼女の生まれ変わりかどうかは分からない。

しかし運命は感じた。

そう、平和になったのだ。

私も青春を取り戻しても良いだろう?

だって世界は愛で溢れているのだから。















「シオン様のセクハラじじい。」

「さすがに私もフォローはできませんよ。」

「違うと言っておろうに!」

「何が違うんですか。
ご自分で女性扱いした後に抱き着くなんて。
とんだ色情魔ですね。」

「違う!」

「ムウよ、シオン様も18のお体だ。
温かく見守ってさしあげよう。
私は近付かんが。」

「そんな目で見るなと言うに!
というか誤解だ!弁解させろ!」

「「……………」」



弟子達の視線が痛い。

どうやら私が青春を取り戻すのはもう少し先になりそうだ。




前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ